『偶然世界』
ディックの世界は第3次大戦後の話が多く、これまた核
戦争フリークの私にはこたえられないものとなっています。
日本にもディック的な小説を書いた人がいます。とい
ってもヴァ−チャルリアリティなんですが岡嶋二人の「ク
ラインの壷」です。一度読んでもらうとディック的な世界
が入りやすいと思います。
もっとも論理的な意味あいで似ているのは安倍公房でし
ょう。
特に「人間そっくり」は「自分は誰か」、「人間とは何か」
を痛切に論理的に描いて一読の価値があります。
そうそう筒井康隆の超虚構宣言も忘れてはいけません。
この人は筆を絶ってしまいましたが早く復帰してもらいた
いものです。
ディックは徹底的に「現実とは何か」「人間とは何か」
を追求した作家です。また、5回の離婚を経験して、ドラ
ッグのため廃人になりかけた経歴があるため、映画のセッ
トを裏から覗いたような背景を舞台に主人公が家庭に苦し
む話が多いのです。そのため、SF界初の私小説作家と呼
ばれています。そのため、神経が疲れているときに読むと
この作家の真価が分かると言われます。十代の時読んで分
からなかったのは当たり前だったのでしょう。
また「ブレードランナー」はカルトムービーの傑作と言
われますが原作に無いものの、いかにもディックが使いそ
うな台詞があって魅了します。とりわけ、ラスト近く、
「お前達人間どもには信じられないような光景を俺は見て
きた。オリオン座で燃える宇宙船、タンホイザーゲート
のオーロラ。
そういった思い出もやがて消える。時が来れば。
涙のように、雨のように…。 その時が来た。」
といった台詞などは泣かせますが、このとおりディックは
この映画の完成目前に亡くなりました。
ちなみに「流れよ我が涙と警官は言った」から
この言葉は取られていると思うのは私だけでしょうか