vol.1[03/04/07]非公式記録up
前書き
参加していただいたみなさま、ありがとうございました。
ここでは、MYSCON4個別企画、法月綸太郎『法月綸太郎の功績』読書会の記録を載せたいと思っています。前回同様これは決して「公式記録」ではありません。ここで蔓葉という一種の再編集の過程が行われていることに注意してください。ですので、以下の記録におきまして、間違い手違い勘違いがありましたら、蔓葉までご一報いただけると助かります。
ちなみに、当然なことですが『法月綸太郎の功績』の話の筋を明らかにしておりますのでご注意ください。
企画開始のその前に
飲み物をつぐCAPを買いに24時間便利屋さんへ。帰ってきたらすでに開始時間を過ぎていた。去年も企画者だというのに遅刻をしたんだっけと反省しつつ、開催。
感想の時間
まず、さんかしていただいたのは順不同で、今田さん、岩堀さん、カエルさん、里見さん、杉本@むにゅ10号さん、スズキトモユさん、そらけいさん、とりこさん、根子さん、naubooさんでした。感想に代えてまず好きな作品を上げてもらいました。おひとり保留で、結果は以下のように。
「都市伝説パズル」………11人中6人。
「イコールYの悲劇」……11人中3人(たぶん)。
「縊心伝心」………………11人中2人。
妥当な結果ですな。
ちなみに僕は「伝説都市パズル」です。
論点の時間
挙手形式はやめて雑談形式に移行。
- この欠点のためにこの作品は面白くなかったというものはなんでしょうか
議題に対しては概ね「中国蝸牛の謎」に集まりました。多くは前半の衒学趣味に対して後半の事件部分の軽いこと。さらに驚くべきことに、このお話は「メフィスト」の雑誌掲載で前編、後編の2回連載だったのです。「それでこの落ちなのか」みたいな驚きが部屋いっぱいになりました。あと「新製品のMacのMarkが虹色なのはおかしい」という指摘もありました。この指摘は意外で面白かったですね。あと作中の鹿沼隆宏は連城三紀彦がモデルなのではという話もありましたが、どこぞで笹沢佐保だという法月本人の発言があったらしいです。しかし、その発言の掲載もとが分からずじまい。情報もとをご存じの人は蔓葉までご一報を。
「イコールYの悲劇」のダイイングメッセージの問題について、そもそも不自然すぎるというもっともな指摘。「たまたま赤字を書いていた」説の杉本@むにゅ10号さんをはじめ何人か問題視していました。詳しくは杉本@むにゅ10号さんの「イコールYの本当の悲劇」にまとめられています。
「都市伝説パズル」は時系列を作った時点で犯人がほぼわかってしまうところが、悪いところかもしれませんが、それが逆に丁寧に物語を作っているところがわかるところでもあります。良くも悪くも教科書的な作品というところで落ち着く。
「ABCD包囲網」はそもそもどうして鳥飼がこんな事件を思いついたのかという根本的な問題や、あとがきで我孫子武丸の指摘している犯行を待ちかまえていたこと、膨大なsiteから容疑者を特定する方法を「その目もくらむような作業を、■■■■はたったひとりでやり通したのです」ですましてしまうのは問題だということになりました。どうやら、法月はインターネットに詳しくないみたいですね、なんて証言を根子さんがしてくれました。どうもmailがやっと使えるぐらいらしいです。
そこで、結局はどれも「バカミス」なのではという真っ当な結論に落ち着くかと思いきや、唯一丁寧に推理を積み上げる「縊心伝心」については、動機の不快感ぶりに反発する意見が続出。これに関しては「これが法月らしい」という好意的な意見も現れて、なかなか興味深い状況になりました。
余談ですが、作品中にしこまれるお遊びとしてクリスチアナ・ブランドの某短編のことが上がっているのですが、これは都筑道夫の某シリーズのことを指しているのではないかという発言や、実はもうひとつ別のところに宮部みゆきの某長編を揶揄したような描写があるなどという意見もありました。
- 推理小説の構造といわれる「謎から分析を通して解決へ」という手順が踏まれているように思えますが、どの辺が論理的だと思いましたか。
実にまったりな状況になってきたので、蔓葉がひとつ用意してきたものを公開しました。物語を箇条書きにしてみると推理の過程が見えてくる、かも。
●イコールYの悲劇
・実際のプロット
・法月警視・久能警部の山猫急便配達員犯人説
↓
はずれ
↓
・久能警部の山科真弓犯人説
↓
はずれ
↓
・綸太郎の円谷朱美犯人説
↓
はずれ
↓
・東郷ゆかり殺害事件
↓
・坂崎翠犯人説
↓
あたり
●都市伝説パズル
・法月警視の三好信彦犯人説
↓
はずれ
↓
・綸太郎の広谷亜紀犯人説
↓
はずれ
↓
・綸太郎の関口玲子犯人説
↓
あたり
・考えられる他の可能性
・松永俊樹自殺説
・野崎哲・長島ゆりか共犯説
・広谷亜紀・遠藤章明共犯説
・広谷亜紀・三好信彦共犯説
●ABCD包囲網
・久能警部の混乱する日常
↓
・綸太郎の鳥飼千秋犯人説
↓
あたり
●縊心伝心
・綸太郎の諏訪祥一・慶子共犯説(首吊り偽装)
↓
はずれ
↓
・ホットカーペットの謎
↓
結論が出ない
↓
・会社に送られた匿名の手紙の謎
↓
結論が出ない
↓
・自殺予告の電話の謎
↓
・綸太郎の自殺予告は犯人強要説
↓
はずれ
↓
・法月警視のドアの錠付け替え失念
↓
あたり
以上、物語を簡単にまとめなおしてみました。推理というものは本来すべての情報がそろった上で行われるべきです。しかし、「イコールYの悲劇」では法月がそのダイイングメッセージの指し示す先を読みとるには東郷ゆかり殺害事件の情報が必要です。もちろん読者にはフェアになるように物語的な構成によってその情報が冒頭で提示されます。しかし、それは本当にフェアなのでしょうか。それは、「縊心伝心」にもいえます。ホットカーペットの謎が提示されて推理ができますが、推理っぽさを醸し出しているのは、推理して外れるその過程の積み重ねなのですよね。事前の情報が全てそろっているかどうかではないのです。これが面白いところですよねえ、みたいなことを話しました。
- 『法月綸太郎の功績』の魅力とはどこにあるのでしょうか。
これもまた例年の如く話せませんでしたが、あくまでも雰囲気では推理小説としてよくできているという結論に落ち着き、もうすぐ完結する『生首に聞いてみろ』を楽しみにするという感じでしょうか。
時の狭間
舞台裏より、たれ目の青年登場。手にはなにやら台本らしきものを持っている。
「あらためて、読書会に参加していただいたみなさま、本当にありがとうございました。
実にまったりとした雰囲気で読書会は終了しました。個人的にはこれまた大変有意義でしたが、みなさんの中にも有意義なものが残っていれば幸いです。今回は人数も前回よりは少なかったおかげで、ゆっくり個々人がいろいろな意見を言えたのはよかったと思っています。
さて、例年同様「本格推理とはいかなるものか」という問いから読書会は企画されています。そもそも「推理小説の推理性を突きつめれば反推理小説にならざるをえない」という持論がありました。これは実は論文にして某所に送りましたのでここでは割愛します。そちらはどうなることやら……まるで、恋文を送った少年のような気持ちです。
今回は推理小説の推理部分がよくできているといわれる『法月綸太郎の功績』を題材に、その推理というものを僕以外の人たちはどのように考えているのだろう、という素朴な疑問を確認するために企画しました。その結果としては「厳密に推理小説の推理部分にこだわって読んでいるわけではない」というあたりが正解みたいです。僕は『法月綸太郎の功績』についてどのように思っているのかは、上のまとめでだいたい書いたつもりですが、いかがでしょうか。
実は去年書いた読書会『鏡の中は日曜日』非公式記録は「推理小説は演出である」みたいな結論で、その思いは未だ変わりません。しかし、もっといろんな意見があっていいような気もしています。むしろ「本格推理小説の定義で混乱するから本格のことは話さないでおこう」という暗黙の前提ができあがっているように思うのです。この壁はなかなか強い。実はこれに関してはMYSCON4当日の夜中に実際に話題にすることになるのですが、それはまた別項で。いずれにしろ、大変有意義なひとときでした。来年はどうしようかともう考えています、再び異論反論がおこりそうなものか、それとも古典にするべきか。評論集というのもやってみたいです。ひとり楽しく考えることにします」
とたれ目の青年が頭を下げて舞台より立ち去る。
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