| ☆ あなごや HEART STORY’S ☆ |
| STORY・1 【 ANAGO−DON of the warmth♪ −温もりのあなご丼− 】 page,2 |
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ユリカ は青年が好きだった。 けれど、一人娘のユリカ にとって。 両親と離れて暮らすことは。出来なかったから。。。 「あのぉ〜。ちょっと、よろしいですか?」 言い争いにまでなりそうなユリカ 達に。その時。 店長が、カウンターの中から、声を掛けてきた。 「聞こえてしまったもので。すみません。」 店長は、まず、謝罪の言葉を述べてから、 「喧嘩はいけません。」 と言った。 |
「喧嘩はいけません。 争いは。何も生みませんから。で、提案があるんですけど・・・」 と店長は続けた。 提案?、、、ユリカ 達は、目を見合わせている。 店長は。その ” 提案 ” とやらを、続けざまに話しだした。 「今日から半年後。もしも、御 2人が幸せだったら。またここにいらして下さい。」 「・・・そ、それの、どこが提案なんですか?」 ユリカ は堪らなくなって。まだ話を続けようとしている、店長の言葉を遮った。 店長は気を悪くした風もなく。 フッと、優しく笑みを浮かべると、こう言い募った。「提案ですよ。」 と。。。 |
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― 店長の提案は。なにやら、不思議なものだった。 ” あなご ” に、運命を託してみませんか。と。店長は提案したのである。 目を丸くするユリカ 達に。店長は、ある話をしはじめた。 ・・・それは、” あなご ” の話だった。 「あなご。実物は、見たことありますか?」 「いいえ。ありません。」 店長の問いに、そうユリカ は答えた。 「では、あなごの別名も知らないですね?」 店長は再び問う。 その問いに。同じ答えを返すユリカ。隣では、恋人も首を横に振っている。 「ちょっと待っていて下さい。」 店長は、クエスチョンマークを抱えているユリカ 達を残して。厨房の奥へと消えた。 暫くして。店長が戻ってきた。その手には、長い紐の様なモノを持っている。 紐?けれどそれは、くねくねと蠢いていた。 「これが ” あなご ” です。」 そう言いながら、店長が差し出したモノ。 それは、何処となく ” うなぎ ” に似ている。だが、よく見ると明らかに違っている。 まず色。うなぎ程黒くない。どちらかというと、茶色に近い。 顔が細くて、全体的にスラリとスマートな感じがする。うなぎより細い胴の・・・? 「うなぎというよりも。” ハモ ” に似てるでしょう?」 と店長。ユリカ達は、思い出せずにいた、その名前を聞いて。ああそうそう。と言った。 「ほら、ここを見て下さい。」 と店長が指差したのは、あなごの背の部分だった。そこには、白い点々があった。 背骨から 5mm程、わき腹に下がった位置に。ほぼ等間隔で淡く白い点々がある。 点々は、わき腹にそっていて。1本の綺麗なラインを、尾に向かって引いている。 その更に 1cm程下がった位置に、今度は濃く白い点々が、 上のものよりも間隔を狭くして、ポツポツと尾までの 1本線を引いていた。 「この点々が、あなごの別名なんですよ。」 店長は、静かに話しはじめながら。大切そうに、あなごを厨房の奥へと引っ込めた。 |
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「あの白い点々。何かに見えませんでしたか?」 店長の質問に、う〜んっ、と考えてみる。 「あなごは別名 ” 多数の星を持つ魚 ” というんです。」 多数の星。星。なるほど。 確かに、背に有る白い点々は星に見えなくもない。 「星。と聞いて、貴方は何を連想しますか?」 その問いに。ユリカ は、ああ、と思い当たる。 「もしかしたら、願い事。ですか?」 「当たりです。」 ユリカ の答えに、店長は笑顔になる。 |
「誰が言い出したのか、ひょっとしたら、私の思い込みかもしれませんが。 でも。多数の星を持つ魚、なんてネーミング。ちょっと素敵だと思いませんか。」 多数の星を背中に抱いて。広い海を悠然と泳ぐ。 そんなあなごの姿を想像しながら、素直に素敵な名前だ。と。ユリカ は思った。 至極自然に。隣の彼と目が合う。 先程まで喧嘩をしていたとは思えないくらいに、彼女と彼は、笑顔だった。 カウンター・テーブルの上には、握ったばかりの 『 あなごにぎり 』 が乗っている。 どんな結果でも。その美味しさだけで、半年後、ここを訪れようと。ユリカ は思っていた。 ― もしも半年後。2人が幸せだったら・・・そして 2人は、店長の提案に乗った。 |
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― 実は。ユリカ が ” あなごや ” を訪れたのは、今週 2度目だった。 今日から半年後。・・・あの約束の日が、火曜日。今日は 3日後の金曜日。 3日前、ユリカ の隣には彼がいた。今。父が座っている席に。 父は、店長の意味深な言葉。例の件。の謎を解くのに必死なようだった。 それでも。箸を持つと、縦長のグラスに入った、 お通しの 『 スティック・春巻き 』 を。難儀そうにポリポリとしだした父。 「お、お父さん。手でいいのよ。手で。」 ユリカ は、思わず吹き出しそうになりながら。 「お父さん。あのね・・・」 と、例の件に対して、話しだそうとした。 とその時。目の前に、2品の料理が運ばれてきた。 『 あなごザク 』 と 『 あなごのダシ巻き卵 』 だった。 「ほう。酢の物か。」 父は何処となく嬉しげに、ついっ、と箸を伸ばした。 タレのよく染みたあなごのぶつ切りと、輪切りのキュウリが酢にマッチして。 なんとも言えぬ程、美味い。歯応えのいい触感と、さっぱりとした味わいに浸っていた。 もう 1品は、ダシ巻き卵。 こちらは酢のものと対象的で、ホカホカと湯気を立てている。 あなごと卵の絶妙なハーモニー。 あっさりとしたあなごの風味を、しっとりとした卵が、旨味ごと閉じ込めていた。 父もユリカ も。知らぬ間に、箸が止まらなくなっていた。 ・・・今日は飲まないつもりだったのだが。どの料理も、酒と共に味わいたい逸品で。 ユリカ は父に、ビールでも飲もう。と提案する。。。父も。即、OKサインを出してきた。 これから話すであろう、そしてもしかしたら、悲しい結果になるかもしれない話を。。。 そんな諸々を。全て忘れてしまいそうな程。ユリカ の気分は満たされつつあった。 |
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