中古ゲームの価格が一元的に定まっていないのは、プライスリーダーが存在しないからに他なりません。
切手であれば日本郵趣協会のような財団法人、マンガ等ならまんだらけ・中野書店といった流通法人格の
大手が全国一律の価格を規定することとなりますが、コンシューマ・アーケード・パソコンといったプラットホー
ムに限らず、中古コンピュータゲームにはそういった構造が存在しません。これは、一つには市場の限定性
(・・・というのも、コンピュータハードの技術的進展が早過ぎる故に、市場から退出したハード上で動作して
いたソフトは現行ハードで動作しないため。また、パソコンゲーム等は市場自体が極めて限られている。)に
左右されていることが考えられ、今一つはコンピュータソフトの著作権規定が未だ明確でないことに起因され
ていると言えましょう。
しかし、現実にコンピュータゲームの中古市場は現実問題として存在しており、日々の取引の中では個別
の価格が決定されています・・・で、プラットフォーム毎に具体的事例を挙げてその傾向を見ていきましょう。
まずパソコンです(^^)/~
1.パソコンゲーム(美少女ソフト)
一般的傾向としては「一般的傾向(1)」を見て下さい。この記事に加えて、最近は初回限定版等、何らかの
付加価値のついた商品が高値になっていますが、基本的に発売日に近いほど「中古価格」「買取価格」は
高価であり、日を経るに従ってその価格は下がっていきます。これは新作ほど需要が多く、商品に経済学的
財としての価値が高いですから極めて自然なことです。そして、一定期間を経て需要が減退すると価値も落
ちていきます。ところが、年月を経て商品が各々のユーザーの手元に退蔵されてしまうと、市場に流通してい
る商品数よりも需要の方が多くなりますので、稀少性が生じて再び価格が上がっていく現象が生じます。ハー
ド市場に変化が無ければだいたいこのような図式が成り立つのですが、ソフトの動作するハードは3〜5年、
どんなに長くても10年たてば完全に切り替わってしまうので、そう簡単に商品に発生する需要が読めないの
です。
ここではWin95での発売作品について、「中古買取価格」が「市場流通量」によって決定されるという仮説
の元に、この2者に関して相関係数を求めてみることと致します。まず同一店舗を対象に個別の作品をいくつ
か挙げて、中古買取価格の変遷を追ってみることにします。但し、今回は「プレミアム化」の影響変数が考慮
されていないため、発売後半年〜10ヶ月という短期的スパンを対象としました。価格調査の二次資料として
『E−LOGiN』『パソコンパラダイス』『メガストア』等を、流通量に関しては『月刊デジタルメディアインサイダー』
を使用しました。
なお、中古買取価格と市場流通は実数及び発売日を1とする小数第3位までの指数表示(四捨五入)を行
いました。表の2,3がそれにあたります。
(註)1.発売当日・翌日にセールスのほとんどをあげてしまうゲームソフトに関しては、発売月=発売日を含
んだ月とするのは各ソフトでデータ計測期間が異なってしまうために精確を欠くことになってしまうの
ですが、適当なデータを示すことが出来ない故に今回はそのまま用いています。
2.本来、月間累積販売数はフローデータであるため、純粋なストック量である買取価格との比較は出
来ないのですが、ここでは任意月の月末時点での市場流通ストックだと思って下さい。
3.初回版・通常版が存在するソフトに関しては、当初流通量で重みをつけた上で平均し、単一指標とし
ていましたが、初回版は退蔵される傾向が顕著なため、通常版に絞りました。
表1 選択資料
| 資料ナンバー | タイトル | ソフトハウス | 定価 | 発売日 |
| @ | Piaキャロットへようこそ!!2 | F&C | 初回版=8,800 通常版=7,800 | 1997/10/31 |
| A | 臭作 | elf | 8,800 | 1998/03/27 |
| B | 初音のないしょ!! | リーフ | 2,500 | 1997/11/28 |
表2 中古買取価格・市場流通量の実数
| 発売月 | 2(ヶ月) | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ||
| @ | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 4,800 | 4,600 | 4,200 | 4,400 | 3,000 | 3,000 | 3,400 | 3,200 | 3,000 | 3,000 |
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 15,240 | 30,366 | 37,795 | 43,230 | 46,768 | 49,481 | 50,062 | 50,625 | 51,174 | 52,207 | |
| A | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 5,200 | 4,800 | 4,400 | 4,400 | 4,200 | 4,200 | ||||
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 28,075 | 47,764 | 63,866 | 75,766 | 82,126 | 88,143 | |||||
| B | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 1,500 | 2,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 800 | 800 | |
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 18,890 | 28,668 | 33,216 | 36,403 | 37,638 | 38,128 | 38,615 | 38,615 | 38,615 | 38,982 |
表3 中古買取価格・市場流通量の指数表示
| 発売月 | 2(ヶ月) | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ||
| @ | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 1.000 | 0.958 | 0.875 | 0.917 | 0.625 | 0.625 | 0.708 | 0.667 | 0.625 | 0.625 |
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 1.000 | 1.993 | 2.480 | 2.837 | 3.069 | 3.247 | 3.285 | 3.322 | 3.358 | 3.426 | |
| A | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 1.000 | 0.923 | 0.846 | 0.846 | 0.808 | 0.808 | ||||
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 1.000 | 1.701 | 2.275 | 2.699 | 2.925 | 3.140 | |||||
| B | (nヶ月後時点)中古買取価格 | 1.000 | 1.333 | 0.667 | 0.667 | 0.667 | 0.667 | 0.667 | 0.533 | 0.533 | |
| (nヶ月後時点)市場流通量 | 1.000 | 1.518 | 1.758 | 1.927 | 1.992 | 2.018 | 2.044 | 2.044 | 2.044 | 2.064 |
ここで、nヶ月後時点での中古買取価格の指数をyとし、nヶ月後時点での市場流通量の指数をxとすると、
@の場合、
平均: xバー≒2.802 yバー≒0.763
分散: Sxx≒0.548 Syy≒0.022
x,yの共分散: Sxy≒−0.030
従って、a1=Sxy/Sxx=−0.030/0.548=−0.055
a0=yバー−xバー(Sxy/Sxx)=0.763−(−0.055)≒0.917
yのxへの回帰直線の方程式: y=0.917−0.055x
相関係数: γxy=Sxy/浮rxxSyy≒−0.273
故に「中古買取価格」と「市場流通量」には、若干の負の相関があるがその関係はそれほど強いもの
ではないことが分かります。
同様にAとBについてこれらの作業を行うと、
Aの場合 回帰直線: y=1.085−0.093x 相関係数: γxy=−0.981
Bの場合 回帰直線: y=−0.570+0.685x 相関係数: γxy=0.069
となり、Aに関しては非常に強い負の相関が見られ、Bに関してはほとんど何の相関も見られないことが
分かります。すなわち、中古買取価格(ひいては中古価格)が市場流通量に規定されやすいソフトとされに
くいソフトがあることになります。これにはいくつかの要因が考えられますが、
1.退蔵されにくく、常に市場在庫が一定数存在する。また、短期間にクリアしやすく、商品の回転が早い。
2.定価がある程度高く、市場側にとっての価格自由度が高い。
・・・こういった作品は、一定期間(だいたい発売後1〜2年)の間、基本的に価格の流動部分内で徐々に傾き
を緩やかにしながら1次関数的な動きをすることが考えられます。今回の例だとAが最もその傾向が強く、Bは
全く逆で、@がその中間の性格を持つことになります。
またこの動向は在地的な差異が存在するはずですので、その辺りも今後追っていくことになるでしょう。