
昔から評判は聞いてはいたのだが、連載誌がマイナーなので、手に入れようとも一般の本屋には置かれておらず、手が出ませんでした。今回友達に借りて一気に既刊を読了。現在15巻まで。以下続刊。殆ど作者のライフワークということらしいです。
子供の頃に置いては、夢、希望、は努力すればかなうものであった。努力、友情、勝利が三大コンセプトの少年週刊漫画雑誌もある。
しかし、努力すればかならず希望が夢がかなうわけではない。夢が高ければ高いほど、希望が大きければ大きいほど、それがかなえられなかった時の絶望もまた深い。
漫画の中のインフレーションとも思われるような果てしない自己向上は、現実には存在しない。強い光を求めていった者たちの影は光が強いほどにまた昏く、その時にその絶望の深淵はどこへ向かうのか?
一巻冒頭、大きな剣を振るい怪物を倒す主人公ガッツは、クールと云うよりむしろ荒んではいるが、これもまた一つの形式に当てはめる事の出来るエンターテイメント系ヒロイック・ファンタジーの系譜だという認識であった。
しかし、その認識は徐々に覆される。幾つかの事件を経て、主人公の周りに起こる不可思議な出来事と彼が追うものを知る事になる。そうして彼が追うのは、人の世に人であることをやめる事で力を手に入れた怪物たちの主人だった。
その4人の邪神の降臨を起こした先にあらわれたのは…。
ここまでが実質第一部だろう。
その後物語は、過去へと飛び、主人公の悲惨な幼年期、逞しくも冷たい青年期、そこで出会った仲間たち、かけがえのない親友となったものを語る。読者はその後に起こるであろう裏切りと殺戮を予感しながら吸い込まれるように物語に没入する。
光を求めていた者の闇への選択、贖われるものとは? 運命の歯車はその一点に向かって収束して行く。選択肢などない運命の中、主人公の行動とは?
そして、現在は第三部、1部からの続きとして、主人公の冒険記へと戻る。しかし、読者はその先にまっているものが、膨大な力を持ったかつての友である事をもはや知っている。その圧倒的な力の前にあるのは絶望だけである事も。
一人の身に負うにはあまりにも重いものを背負った主人公は、これからどこへ向かうのか。
これは傑作だ。テーマも重く作りも巧いが、それだけでない、動機が明らかになった先になにがまっているかも読めない、きっと予定調和では終わる事のないラストを予感させる。続きが楽しみな作品である。 (1998.5.15)
「ベルセルク」(1巻〜15巻 以下続刊 ヤングアニマル連載中) 三浦 建太郎 \505 白泉社