'97年5月の本の紹介

'97年5月の本の紹介


「詩的私的ジャック」森 博嗣
「封印再度」森 博嗣
「龍の棺」高橋 克彦
「火星転移」(上・下)グレッグ・ベア
「内海の漁師」アーシュラ・K・ル・グィン
「ブラック・ダリア」ジェイムズ・エルロイ

「詩的私的ジャック」 森 博嗣 講談社 p330 \880

「詩的私的ジャック」表紙

 那古野市内の大学施設で女子大生が立て続けに殺害された。犯行現場は全て密室。その
うえ、被害者の肌には意味不明の傷あとが残されていた。捜査線上に挙がったのはN大学工
学部助教授、犀川創平が担任する学生だった。彼の作る曲の歌詞と事件が奇妙に類似して
いたのだ。犯人は何故傷痕を残し、密室に異様にこだわるのか? 理系女子大生、西之園萌
絵が論理的思考で謎に迫る。
 5分の4まで読みました。このシリーズ、途中からcoolさが薄くなっている気がするなぁ。インパクトに慣れてきただけかなぁ。確かに犀川と西之園の恋愛の進展に注意が行くというのも分かる作りではありますね。
 ここで4作目なんだけど、今までにも盛んにフラッシュバックとして萌絵の両親が飛行機事故で亡くなるシーンが出てくるね。ふと思ったんだけど、この先の刊で実はその飛行機事故が犯罪で、「時の娘」見たいに過去を振り返るのみで犯人を探り当てるなんてのが出てくると面白いかも。その際、犀川まで疑わざる得ない状況まででてきて萌絵が苦悩する、とか。こうなるともう最終回、か。(笑)
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昨日終わりました。
本格の切れ味ですね。でも、やっぱり最初「すべてがFになる」にあった"自身を客観視する様な突き放した冷たさを持つカラー"は収まってきて、普通の本格的派になってしまったような気もします。萌絵の学園ラブミステリ…って、赤川次郎かいっ!?(^_^;)。主人公(と、毎回登場する人物)以外の事件事件の人物がロール的存在というか記号的存在の様に読み進められちゃう感じで。
今回終わり方もちょっと唐突のような感じでした。(それでも充分及第点ですが)。
さて、次は最新刊「封印再度」だ。


「封印再度」 森 博嗣 講談社 p400 \900

「封印再度」表紙

 岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。その名は、「天地の瓢」と
「無我の匣」。
 「無我の匣」には鍵がかけられており、「天地の瓢」には鍵が入っている。ただし、鍵
は「瓢」の口よりも大きく、取出す事ができないのだ。五十年前の香山家の頭首は、鍵を
「瓢」の中に入れ、息子に残して、自殺したと言う。果たして「匣」を開けることができ
るのか? 興味を持って香山家を訪れた西之園萌絵だが、そこにはさらに不思議な事件が待
ち受けていた。
 うんうん。すごい。ばっちりだ。この「封印再度」。毎回付いている英語の副題も気が利いてる。今回は「who inside」。
 このシリーズ、触発というか琴線に触れる事が多いな。そういう作品を俺は好きなんだけど。それはやっぱり作者の生き方や人生哲学から来るものなんだろう。そしてそれを解析する能力。---意味を考えなければ、現象が日常を通りすぎていく事がなんて普通の事か、日常に於いては。対してこのシリーズの怠惰な日常に流されずに、思考のアイドリング状態でさまざまな事を考えているというこの感じ、いいですね。---(さらにそれを物語る作者の力。これが一番大事か?(^_^;))
 今回は、箱と壷に入って出せない鍵の話。事件はその添え花(かな)。でもそのエピソードの寂寥感がいいです。刑事コロンボのエンディングに流れる口笛のテーマみたいなのが、読み終わって心の中で流れていました。
 自分が啓発される思考様式(犀川、西之園のね)、そして無常感。今回はなかなか良かったです。
 ちなみに壷の謎は自分は底でも取れるのかと思ってました(^_^;)。まさか、そんな・・・。
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 寂寥とした読後感は、京極夏彦「絡新婦の理」的ですね。そういや、結構、京極氏とダブる所があるなぁ。前作「詩的私的ジャック」もなんかそんな感じのなかったっけ? そうそう、今回裏表紙の推薦文は京極氏。さすがの名文です。ごちそうさま。
 「ごちそうさま」と言えば、萌絵が貰ったe-mailですが、その送信者であり、今回サブストーリの中で気味が悪いほどに機嫌がいいと言う事で、目立っていた国枝桃子助手、いったいどうしたんでしょうか? 森博嗣氏はこういう瑣末な謎(と言う程でもないけど)を解明しないまま読者に任せると言う、姿勢が多いと思うな。それが、このシリーズの「らしさ」であるとも思うんだけど。状況説明だけで解説を付けないのは、まさに先程あげた「ものを読み解く力」(解析力)を読者が試されているんでしょう。しかし、なにも考えなければ、さらっと読めてしまう当たり、重要なのは「解」を見つける事ではなくて、適切な「問い」を得ること、なんて言葉が心を過ります。(桃子助手は御懐妊ですかね?(^^)。そんなメールを送ること自体恥ずかしいと思うけど、俺は(^_^;)。単なるナチュラルハイ?)

 次作予告が「まどろみ消去」となってますがこれは短編集。このシリーズはこれで終わると言う訳ではないんだよね?(^_^;)。そんな予備知識の上に、萌絵がアレでは、途中、この作で本当に最終回かと思いました。犀川助教授、やるね。式を挙げるのではなく契約という事に走るのは、やっぱり研究者だからか(笑)
 「まどろみ消去」って、こやま基夫の漫画みたい。<それは、「おもかげ幻舞」(週刊少年チャンピオン連載)だって。ちょーレアネタ(笑)。ちなみに、こやま基夫は、「おざなりダンジョン」(月刊コミック・ノーラ連載)書いている人です。(こっちの方がレアかも)。こういうタイトルの付け方好きなんだよね。この方。「おざなりダンジョン」では各話がそういう感じのタイトルでした。あー、どんどん話が逸れる(^_^;)。
「龍の棺」 高橋 克彦 祥伝社 p552 \1,100

「龍の棺」表紙

龍とはなにか? 何故西洋では悪魔、東洋では聖なる存在なのか? 古代文化の栄えた津軽
十三湊、長野県皆神山ピラミッド、諏訪と出雲…。奇妙な土地買収事件を発端に、各地に
残る「龍」の痕跡を辿り始めたTVディレクター九鬼虹人に執拗な妨害が連続した。やがて
ローマ・ヴァチカンの黒い影が浮上し、謎を追って九鬼はインド、パキスタン、トルコの
調査行に旅だった…。
待ち受ける敵と謀略。「龍」が語る驚愕の真相とは? 文明史とその定説を覆す壮大な推理
で激賞を浴びた大河伝奇巨編。
 某先輩に久しぶりにかけた電話で、「超科学本」ネタで盛り上がった時に、「神々の指紋」の話が出たんだけど、俺は読んでなかったんす。なんでも、かなりヤバめらしい。免疫の無い一般人が読んだら信じちゃうぞ、これは、と言う感じらしいです。(他にも「(ピー)、宇宙人説」や「(ピー)は無かった説」なイッてる話で盛り上がったんですが、刺されそうなので割愛(笑))
 そこで、引き合いに出したのが、「龍の棺」と「総門谷」。これを読んで免疫を付けとかないと、という話になった。本棚(というか、本の地層)から、タイムリーに出てきたので再読してます。
 ううむ。昔初めて読んだ時に比べて、今ひとつ没頭できないのは、オチを知っているからかな? おなじみの「竹内文書」「東流日外三郡誌」なんかの解説されると、(面白いけど)身構えて読んじゃうからかなぁ。
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 ん。やっぱりそこそこ面白かったです。たるい所もありましたが。第二部の前半で中弛みを感じました。それは、旅行記になってしまっているから。
 そこで思ったのが、この本は、ストーリよりも、その仮説を楽しむのが王道である、ということ。。あちこちのなじみぶかい(そしてなじみのない)神話や遺跡から、導き出される仮説は、上手くハマったパズルのようで脱帽です。因幡の白兎、***説とか、モヘンジョダロの***説とか、そしてそれを繋ぐ、「牛」と「龍」…。
 尤も、初読の時(大学当時)とは違って、ある程度、突き放しながら読んだので、詭弁的論調をニヤニヤしながら解析してました。(タネは、二分法とブラフとサクラにあり、か。)。
 しかし、これが小説で無ければ、信じちゃう人も多いと思います。まぁあながち違うともいえない部分も多いと思うんだけど。ヤバイって。
 もしかしたら、小説にするより、ノンフィクションで仮説だけで売った方が儲かるかも(ほんとに、***ンから刺客が来たりして(^_^;))

「火星転移」(上・下) グレッグ・ベア 早川書房 p \

「火星転移」表紙

 人類が火星移民を始めて100年を経た22世紀後半。火星市民はナノテクを始め
とする先端技術を適度に取り入れた共同体生活を謳歌していた。だが、火星が独
立憲法の制定と政治的統一を目指していたその時、母なる地球は密かな陰謀をめ
ぐらしていた。テクノロジーの袋小路に突き当たった地球の目的はただ一つ…独
立にはやる火星を従属化、搾取すること。未曾有の動乱の嵐は、今まさに赤い惑
星を巻き込もうとしていた。
 昨日から読み始めました。
 「女王天使」より読みやすいと聞いていたんですが、第一部はジュヴナイルですね。ハインラインのそれを髣髴とさせます。政治を志すヒロイン、そして、物理で世界の総べての理解を夢見る青年、触れ合った道は、また別れ、これからどうなっていくんでしょうか。
 そうそう、この「火星転移」、「女王天使」と同宇宙モノだとか。「女王天使」では、テクノロジーとそれによって変容した社会、個人をガジェットを積み重ねて描き出していましたが、こちらではストーリメインの王道な作り。主人公達の成長と共に人類世界の躍進を語ってくれるんだろうか?

「火星転移」表紙 ---
 たしかに、ジュブナイルしているわ。でもってさくさくと読めます。「女王天使」に出て来た「ジル」って思考体もでてきて、ちょっと懐しい。
今は、地球の火星に対する陰謀は何であるか、と(まぁ、チャールズの研究なんだろうけどさ)、主人公キャシーアのキャリア・ステップが話の中心です。
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 順調に読み終わりました。なかなかよかったです。最後のあのエピローグはオチと呼べるんだろうか。最後にやっぱり爽快感がほしかったけど。(しょうがないか)。
原題が[MOVING MARTH]ってことで、火星動乱とかけていているのかな?
訳者は、「月は無慈悲な夜の女王」(ハインライン)と比較してましたが、それより、やっぱりハインラインならジュブナイルの方が近いと思う。
 この火星、今後どうなるんだろう? この先のシリーズはでるのかな? 巻末見たんだけど、本の紹介は載ってなかったな。「女王天使」をあたらねば。


「内海の漁師」 アーシュラ・K・ル・グィン 早川書房 p \

「内海の漁師」表紙




「ブラック・ダリア」 ジェイムズ・エルロイ 文春文庫 p577 \690

「ブラック・ダリア」表紙

 1947年1月15日、ロスしないの空き地で若い女性の惨殺死体が発見された。ス
ターの座に憧れて都会に引きよせらせた女性を待つ、一つの回答だった。漆黒の
髪にいつも黒ずくめのドレス、誰もが知っていて、誰も知らない女。いつしか事
件は<ブラック・ダリア事件>と呼ばれるようになった…。
 "ロス暗黒史"四部作の、その一。

いやぁ、よかったです。薄暗い情念と暴力の世界ですな。
ストーリー的にも、二転三転あって、淡々とした世界を描写するかと思いきや、小説バリの(小説なんだけど)伏線、絡みがあったりして。
このロス4部作、2巻目までは出てるんでしたっけ?文庫本化はしていないのかな? (1997/05/23 10:02:43)


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