'97年4月の本の紹介
「匣の中の失楽」竹本健治
「ウロボロスの偽書」竹本健治
「ハイペリオン」ダン・シモンズ
「すべてがFになる」森 博嗣
「冷たい密室と博士たち」森 博嗣
「ハイペリオンの没落」ダン・シモンズ
「笑わない数学者」森 博嗣
「匣の中の失楽」 竹本健治 講談社
ふと、買ってみました。なかなか面白げ。結局、「エヴァンスコットの戦争」をそっちのけで読んでおります。(^_^;) 本格推理モノと言う感じです。出だしは。雰囲気がいいっすね。
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今、第二章の途中まで読みました。もう、作者の本格好きが伝わってくるねぇ。この章で、メタフィクションの観を呈してくるんですが、かりょの言から推測するに、二転三転のメタフィクション化でも控えているのかな(^_^;)?
夢見るインテリの為の本って感じですね。ま、空想好きの蘊蓄家と置き換えてもいいけど。雰囲気は本文中でも言及しているけど、中井英夫の「虚無への供物」的で、俺は好きです。ま、ちょっと強引なおどろおどろしさはあるけどね。(ブラックホールネタとか(笑))
ま、つづけて読み進めます。
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昨日の帰りの電車で読み終わりました。ふぅ。
本格へのテーゼであり、アンチテーゼであり、アウフヘーベンですな。最後に名探偵が(自分は考えないでも)綺麗に謎を解いてくれて、「あぁ、すっきり」と言うのを求めてしまうと、ダメでしょう。俺は好きです。やっぱ過程がいいよね。おどろおどろしい雰囲気に、擬似科学的な仮説。
すっきりさせる事では無く、より混乱させるように作ってある訳ですね。なんか登場人物を認識しきれなかったっす。(^_^;) 暇な時にはまた再読したいです。(今度は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」(村上春樹)のように、奇数章だけ偶数章だけで読んでみたい)。
そしてそして、今日は続いて「ウロボロスの偽書」を買ってしまいました。ついでに、大金をはたいて念願の「ハイペリオン」も。面白いと各友人関係から噂を聞くので、頑張ってしまいました。ひー。
「ウロボロスの偽書」 竹本健治 講談社
読み進めてます。第二週目連載の章まで入りました。
メタ推理小説の次は実名小説でメタ推理(適当な命名(^_^;))をやるつもりですかね。こういう小説はたくさんのガジェット、伏線をいかに収束させるかが手腕の問われる所だと思います。
あ、なるほどね、と思えて及第。ええっ!?そこがそうなるのはあれがああなって…と研究書状態で読み直すほど納得すると、スゴイ作品となるんでしょう。
前作は登場人物が学生で今ひとつ人物の書き分けが分かりにくかったせいで、良く分からないままに読み進めたというのがあったのですが、今回は「匣の中〜」から十何年後の執筆ということもあって、結構人物がしっかり書けているのではないかと思います。わかりやすいもん。
あと、綾辻の奥さんが不由美でなんて出てきて、実名小説の知っている部分にはニヤリとさせられます。(そんなに他の本格を読み込んでないから、知っていればもっと面白いかもしれない、と、ちょっと悔しい(^_^;))
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途中まで読んで思いました。なんで「虚無への供物」「匣の中の失楽」とあわせて、俺は結構好きなんだろう?と。それは、雰囲気だと思い至ります。おどろおどろしいと言うのは客観的に好きな所で、もっと居心地のいい「好き」な感覚。
高校時代やなんか、こういう雰囲気、蘊蓄好き奴は周りに多かったような気がする。本をよく読んで、プロレス講義の後それこそ突然現代物理学のなんちゃるかを語ってしまうような。思えば、生きるってこと、取り巻く世界の成り立ち、アイデンティティを求めていたんだろう。。。いわば別の意味での同じ匂いを持った「黄昏の世界の住人」ですな。それが、俺が居心地のいい理由なのかもしれない。
今回は前作で慣れていたせいも有り、(といっても、整理しながらなんか読んでませんが)、順々に読み進めました。文中に有るように小説のメタ化を意識せざる得ない構造に翻弄させられながら。
アンチ本格たる由縁の「アンチ作者からの挑戦状」なかなかにやりとさせられました。オチ的には、「不思議な少年」「ねこぢる」っぽくありました。小林よしのりのマンガで最近のヤツもこんな感じのがあったような(でもつまらなかった)。そうそう、筒井の「朝のガスパール」もメタ小説でした。
新書判の後書きによると、意味深にも、続編…というか新作も匂わされています。読者は楽しみに待ちましょうか。
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後日の情報によると、続編らしきものがハードカヴァー(値段から推測)で出ているようですね。
「ウロボロスの基礎論」 竹本健治 著 講談社 本体2427円
もっとも金欠の自分は買わないでしょう。。。しばらく経ってから思い返して比較すれば、「ウロボロス〜」より「匣の中の〜」の方が面白かったというせいもあります。後者の方が、より「虚無への供物」に近いし。なんか振り返ると、謎は覚えているんだけど、その解決が記憶の外というのも、(なんども言及していて恐縮ですが)「虚無への〜」に近いかも知れません。仮説(奇説)を幾度も組み立てては破棄するということをくり返す物語構造故かもしれませんが。
#この何度も仮説を組みたてるというのはなかなか頭がいいと思います。探偵が最後まで黙っていて、最後の最後に「これは〜で」なんて言うのは、予め決まった(作者の決めた)結末を語る傀儡となっている気がするし。これらの作品の場合「奇説」が多いのでそうも感じませんが、探偵(刑事)が出された証拠の破片から推理を積み上げていく(そして、一つのピースが合わなくてまた仮説を組みなおす)という構造の面目躍如はコリン・デクスターの「ウッドストック行き最終バス」に始まるシリーズでしょう。作者がパズルマニアというのもうなずける話しであったりします。(^^)
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「ウロボロスの基礎論」もとうとう新書に落ちまして、おかげで速攻、購入。感想は後日…。(97/09/21)
「ハイペリオン」 ダン・シモンズ 早川書房 P532 ¥2,900
28世紀。人類は宇宙へ進出し、二百に登る惑星を転移網で結び連邦を形成していた。その
辺境に位置する惑星ハイペリオン…この星には謎の遺跡<時間の墓標>があり時を超越し
た怪物シュライクが人々の畏怖と信仰を集めていた。
ある晩、ハイペリオン元領事のもとに、惑星に戻れとの要請が届いた。<時間の墓標>を
取り巻く抗エントロピー場が膨張し、囚われていたシュライクが解き放たれる時が近づい
ていると言う。
おりしも宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンに進攻を開始、その手に落ちる前に<時間
の墓標>の謎を解明できるか否かに、連邦全体の命運が懸かっているのだ。
かくして元領事始め、惑星ハイペリオンに因縁浅からぬ七人がこの謎を追う最後の巡礼と
して集い、<時間の墓標>を目指す旅に出る。
その途中で語られる、それぞれが背負った数奇な宿命とは…。
昨日の帰りの通勤電車にて読み終わりました。未完(というか、次刊で完結)とは聞いていたのですが、この一冊がまるまる導入編となっている故の面白さというか、物語の収束に向けて「さぁいま風呂敷を広げているよ」というわくわくした感じと、伏線同士の繋がりはあるけど、これからどうまとまっていくのか計りかねる懐の深さを感じて(もちろん話しが面白い)よかったです。(^^)
アイザック・アシモフの「ファウンデーションへの彼方へ」もそういう作りであったと、ふと思い返しました。(あえていうなら、「おいおい、これだけ壮大に語ってくれちゃって、そのオチは次刊だと〜!!」って感じでしょうか。話しが面白い分、そこで切られているのがくやしいというか(エヴァの映画REBIRTH編みたい(笑))、次刊でちゃんと伏線がまとまらなかったり、つまらなかったらこの本が面白い分やだなぁという思いも有り、という感じです。(^_^;))
この作品「ハイペリオン」のモチーフになった詩人ジョン・キーツに対して自分は知識がないので、「仕掛け」をフルに楽しんでいないんだろうなぁというのが、残念ですが。。。
それでも、いわゆるくすりぐりな面を知らなくてもメインのストーリィはぐいぐいひっぱってくれ、ハイペリオンに集まった7人の巡礼たちが順番に語る物語はそれを意味深く補完していく。その構造、その深遠、その物語!!。自分が一番心を捕らえられたエピソードは一等最初に語られる「司祭の物語」です。そのオチといい、ゾクっとしました。
今、思いついたんですが、7人が集められ(集まり)、外では大きな出来事が起こっていて、その7人がそれぞれの数奇な物語を語り始め、解決に向かうというのは、ある種「本格」の香りなんだよね。
ハードカヴァー2,900円の価値はあったな。さっそく「ハイペリオンの没落」を買わねば。。。(何年も前の本なので次刊も待たずに買えてよかった。ほっ(笑) しかしまた散財だなぁ…)
「すべてがFになる」 森 博嗣 講談社 P369 ¥880
十四才の時、両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じ籠った
天才工学博士、真賀田四季。
教え子の西之園萌絵とともに、島を訪ねたN大学工学部助教授、犀川創平は一週間、外部
との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウェディ
ングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに
記されていたのは「すべてがFになる」という意味不明の言葉だった。
お薦めに従って購入しました。これが、びっくりするほど面白い。日曜に他の用事もせずに没頭して、一気に読んでしまいました。こんな感じは久しぶりすね。
謎解きの前に手がかりは全てあがっているフェアな姿勢は本格の王道の上(これだけならよくある)、その道に至る過程が理系的価値判断にあるってところが新鮮ですね。舞台も研究所、UNIXとUNIXライクな怪しげなREDMAGICなんてOSまで出てきたりして。
主人公がこんな孤島の研究所こそ環境の理想だなんていう下りがあるんですが、確かに常識はずれしてはいるんだけど、(前に「ウロボロス〜」でちょっと書いたけど)この雰囲気や思考性向は、なんだかとってもなじみぶかかったりして、「そうそう。そうだよ」なんて思うのはやっぱり自分が理系思考だからかなぁ。こういった研究室系の人間の考え方が上手く書けていると思います。そしてその中でのタイプ分けもしっかり出来ていて、あ、いるいるなんて思えてしまう。。。
とにかく、面白かった。(^^) 自分のSF好きとミステリ好きにずっぽりハマったってかんじです。
「冷たい密室と博士たち」 森 博嗣 講談社 P297 ¥800
同僚の喜多助教授の誘いで、N大学工学部の低温度実験室を訪ねた犀川教授と、西之園
萌絵の師弟の前でまたも、不可思議な殺人事件が起こった。衆人環視の実験室の中で、男
女二人の院生が死体となって発見されたのだ。完全密室の中に、殺人者はどうやって侵入
し、又、どうやって脱出したのか?しかも、殺された二人も密室の中には入る事ができなか
ったはずなのに?研究者たちの純粋論理が導きだした真実は何を意味するのか?
順調に一日で読了。「すべてがFになる」の続編です。前回と一転して、王道、オーソドックスな密室モノです。こうしてみると、前回のは「羊たちの沈黙」であり、その犯人のコワイくらいの天才さに魅せられたんだなぁと思い返してます。そういや、「すべてがFになる」の冒頭のインタビューは「羊〜」のヒロインがレクター博士と獄中で会談をするシーンを思い起こさせます。些細なしぐさや躊躇、言い回しからずばずばと心に踏み込んでくるその天才ぶりにゾクっときました。。SFと言うわけでもないのにセンス・オブ・ワンダーを感じてました(^^;ゞ
前作に劣らずフェアに状況は読者の元にさらされています。でもやっぱり理系なんだよね。ふと思い付いたのは栗本薫「優しい密室」これは伊集院大介シリーズの初期の作品なんですが、これも主人公の女生徒と教生のコンビだったりするんだよね。しかしアプローチはあくまで今までの推理モノ的文系アプローチ(この「すべてがFになる」の感覚の方が珍しいのだから当然か(^_^;))で、同軸線上の対極にあるという感じの作品です。
さて、次は「ハイペリオンの没落」だ。
「ハイペリオンの没落」 ダン・シモンズ 早川書房 P613 ¥3,000
連邦の主星タウ・ケティ・センターの上空に色鮮やかな光条をいく筋も描いて、FOR
CEの無敵艦隊が出撃してゆく。宇宙の蛮族アウスターとの戦いの火蓋がついに切られた
のだ。
艦隊が転移する先は辺境惑星ハイペリオン。時が逆行する遺跡<時間の墓標>を擁し、
殺戮者シュライクがばっこするこの星は、いまや、連邦全体の命運を分ける対アウスター
戦の重要な拠点として全連邦の注目を集めていた。
人類の同盟者たるAI群<テクノコア>もまた、持てる予測能力を駆使して対アウスタ
ー戦に参与、その助言をうけて連邦政府は無謀なまでの軍力をハイペリオンに差し向ける。
一方アウスターに制される前に<時間の墓標>の謎を解明すべく、連邦政府の要請を受
けて最後の巡礼がこの遺跡を訪れていた。それぞれの運命に翻弄される巡礼たちの目前で、
いよいよ<時間の墓標>が開き、全ての謎が解明される時が近付いてきた。
一昨日、読了しました。
いや、よかったっす。ホント。前作「ハイペリオン」で7人の巡礼による6つの物語が語られ、それが大きな柱だったんですが、この「ハイペリオンの没落」では、その柱にそれぞれ横糸が絡みあい、高みに登るほど横糸は密になり、景色は開け、見事に収束していきます。
第二人格のキーツによる、俯瞰的観察者により、夢見られ、まさにテレビのチャンネルとがちゃがちゃと変えるザッピングのように、いい所で場面転換しつつ、近に遠に物語は語られていく。そして、そう、物語なんだよね。レイチェルのエピソードに始まるドラマは、もう人情モノに弱い江戸っ子の俺には、もう涙無くしては読めなかった。すごい。
物語と言う点で、エンディングが、爽快ながら希望に満ちたもので、そういった点でも余韻が良くて、読む甲斐がありました。まさにエンターテイメント。
蘊蓄系はやっぱり全てをトレースできない感じが残ったのが心残りだけど(はい、自分の力不足です。)、作品的にSFの中で過去の有名人が主人公になるというのは、「果てしなき河よ我を誘え」(リバーワールドシリーズ)のサミュエル・クレメンズ以来でしょうかね。うむ。重厚。
いいっすよ。往年のSFの大集成と行った感じです(^^)
「笑わない数学者」 森 博嗣 講談社 P344 ¥880
伝説的数学者、天王寺翔蔵博士の住む三ツ星館でクリスマスパーティが行われる。人々
がプラネタリウムに見とれている間に、庭に建つ大きなブロンズのオリオン像が忽然と消
えた。博士は言う。「この謎が解けるか?」像がふたたび現われた時、そこには部屋の中に
いたはずの女性が死んでいた。しかも、彼女の部屋からは、別の死体が発見された。パー
ティに招待されていた犀川助教授と西之園萌絵は不可思議な謎と殺人の真相に挑戦する。
「ハイペリオンの没落」後、かかり始めて読了しました。う〜ん、シチュエーション的には「すべてがFになる」という感じを取り戻していましたね。
謎も大がかりだし。一応解かれる前に分かったけど(^_^)V。これ言ったらネタバレかもしれんけど、「斜め屋敷の〜」(島田荘司)って感じですね。
エンディングで、生存を仄めかされていたけど最後に曖昧なまま放り投げられてしまったのはちょっと居心地悪いなぁ。こういった人物は今後関ってくることがあり得るんだろうか?(そういえば、「すべてがFになる」の博士、今後の再登場あるのかな。丁々発止のやり取りを見たいもんだな。)

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