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「クリエイティブ・コモンズ」について

Rev. 1.0.5 / 2003年9月15日
荒川 靖弘

「クリエイティブ・コモンズ」とは

「クリエイティブ・コモンズ」(Creative Commons)は米国の憲法学者Lawrence Lessig 教授などが中心になって運営されているプロジェクトです(1)。「クリエイティブ・コモンズ」では,知的財産権によるコントロールを意図的に制限し残りの部分を「知的共有地」に置くことによってあらゆる創造的な活動を支援できると考えています。今のところ「クリエイティブ・コモンズ」の主な活動としては以下のプロジェクトがあります。

「ライセンスプロジェクト」は著作(権)者が著作物に対し権利範囲を設定する煩わしさを軽減するためのWeb上のツールを提供しています。一方「アメリカ建国時代の著作権」はもっと政治的なもので,現存する著作物の著作権の範囲を(主に適用期間について)限定するよう働きかける活動です。米国では著作権の適用期間がほぼ無限大に近い状況になっているため(2),これに対抗する手段として用いられています。「国際的なコモンズ」は「ライセンスプロジェクト」が用意するツールのうち「Legal Code」と呼ばれる部分(後述)を各国の法律等に合わせて「翻訳」を行う活動です。(節[クリエイティブ・コモンズ・ジャパン]参照)

本テキストではまず,私達一般の人でも導入が容易な「ライセンスプロジェクト」について簡単に説明します。

  1. 現在「クリエイティブ・コモンズ」プロジェクトはスタンフォード・ロースクールを活動の拠点としています。
  2. 米国議会では度々著作権期間の延長を認める決議がなされています。現在は最長120年まで認められています。ミッキーマウスの著作権期間と呼応していることから,通称「ミッキーマウス法」と呼ばれることもあります。

ライセンスプロジェクト

ライセンスプロジェクトでは「CREATIVE COMMONS PUBLIC LICENSE(CCPL)」と呼ばれる一連ライセンス(使用許諾)を公開しています。CCPLでは以下に示す4つの「ライセンスオプション」の組み合わせ(表1.1.1[オプションの組み合わせ一覧(11種類)]参照)によって権利範囲を設定できるようになっています。

オプションの組み合わせ一覧(11種類)
オプションの組み合わせ 内容
by 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。二次的著作物(派生作品)についても同様です。
by-nd 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。ただしフェアユースの範囲を超える二次的著作物(派生作品)については著作(権)者の許可が必要になります。
by-nd-nc 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。ただし営利目的利用およびフェアユースの範囲を超える二次的著作物(派生作品)については著作(権)者の許可が必要になります。
by-nc 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。ただし営利目的利用については著作(権)者の許可が必要になります。
by-nc-sa 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。ただし営利目的利用については著作(権)者の許可が必要になります。二次的著作物(派生作品)については元になる著作物と同じライセンス下でのみ認められます。
by-sa 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示を条件とします。二次的著作物(派生作品)については元になる著作物と同じライセンス下でのみ認められます。
nd 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示は必要ありません。ただしフェアユースの範囲を超える二次的著作物(派生作品)については著作(権)者の許可が必要になります。
nd-nc 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示は必要ありません。ただし営利目的利用およびフェアユースの範囲を超える二次的著作物(派生作品)については著作(権)者の許可が必要になります。
nc 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示は必要ありません。ただし営利目的利用については著作(権)者の許可が必要になります。
nc-sa 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示は必要ありません。ただし営利目的利用については著作(権)者の許可が必要になります。二次的著作物(派生作品)については元になる著作物と同じライセンス下でのみ認められます。
sa 著作物を複製・配布・表示・上演するにあたり著作(権)者表示は必要ありません。二次的著作物(派生作品)については元になる著作物と同じライセンス下でのみ認められます。

ライセンスプロジェクトでは以上の権利の組み合わせを分かりやすく選択できるようにするためのWebアプリケーションを公開(http://creativecommons.org/licensehttp://www2.117.ne.jp/~mat/cc/license/(日本語訳ページ))しています。このアプリケーションで条件を選択し得られた文言(コード)を著作物に添付すれば完了です。ライセンスプロジェクトが提供する「コード」は以下に示す3つの部分で構成されています。

コモンズ証(Commons Deed):
ライセンスを設定・利用する私達ユーザが扱いやすいように要約された文言です。表1.1.1[オプションの組み合わせ一覧(11種類)]の内容はコモンズ証に相当します。
契約条文(Legal Code):
法的に有効な形で示されるライセンス条項です。通常はコモンズ証からリンクを張ることで両者を関連付けています。
ディジタル・コード(Digital Code):
コンピュータで処理しやすい形で表現されたメタコードです。メタコードの表現としてはRDF(Resource Description Framework)が用いられています。

本テキストの末尾に帰属ライセンスによるライセンス表記があります。参考にしてください。

権利のフルセット

ライセンスプロジェクトで提供されるライセンスオプションの組み合わせは全部で11通りありますが,全てのオプションで共通な条件があります。まず大前提として以下の権利はライセンスプロジェクトが定める全てのライセンスオプションによっても侵害されません。

また利用者は著作(権)者に対して以下の条件を要求されます。

逆に利用者は上記の条件に従って利用する限り以下の許可が与えられます。

以上述べた権利のフルセットは

クリエイティブ・コモンズの限界

クリエイティブ・コモンズおよびその具体化のひとつであるライセンスプロジェクトはさまざまな状況に適用できますが,限界や制限もあります。

対象となる著作物の制限

クリエイティブ・コモンズは今のところソフトウェアライセンスに関与しない方針のようです。ソフトウェアライセンスについてはGNU GPLやそれに近いライセンスツールがネット上で公開されていて,今のところそれらはかなり有効に機能しています。ソフトウェア作者の場合は複数のライセンス体系をかけもちすることになるかもしれません。その場合それぞれのライセンスがお互いに矛盾しないように気をつける必要があります。

表明保証条項

CCPLには「表明保証条項」と呼ばれる条文があります。具体的には

で示される部分です。CCPLでは基本的には著作物の内容について無保証を謳っていますが,第三者の(「著作権、商標、パブリシティ権、コモンロー上の権利」や名誉・プライバシーといった)権利を侵害する場合は例外としています。これらの権利を侵害した場合には賠償請求等が発生する可能性もあるため著作(権)者のリスクが高くなってしまいます。

二次的著作物

二次的著作物については,もとになる著作物に付与されるライセンスによっては自分で設定したライセンスが有効に機能しない場合があります。これは(元の著作物の翻訳など)意図的に二次的著作物として作られたものだけではなく,結果的に他者の著作物の一部が混入してしまった場合(例えば映像の背景に他者の著作物が写り込んでしまったなど)も同様です。また前述の「表明保証条項」によるリスクにも注意する必要があります。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

これまで国内におけるクリエイティブ・コモンズの情報は限定的なものでしたが,ついにライセンスの日本語化に取り組む「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」が動きはじめました。取り組みはまだ始まったばかりですが,近い将来に日本の法事情に合わせた活動ができるようになると期待されています。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン「国際的なコモンズ」プロジェクトの一環として発足しました(3)。現在はCCPLの(日本の法事情に合わせた)翻訳とそれに伴う議論が交わされています。いくつか挙げてみます。

  1. 「集合著作物」,「二次的著作物」の定義について
  2. 「フェアユース」(Fair Use)の扱いについて(日本では法的には「フェアユース」は認められていない)
  3. 「使用許諾の付与」について,以下の項目を含めるかどうか
  4. 「再使用許諾」の制限について,二次的著作物を許可する場合にはこの制限は矛盾しないか
  5. 「表明保証条項」について(節[表明保証条項]参照)
  6. 「責任制限」について
  7. 著作権期間が日本とアメリカでは異なる
  8. 「準拠法は日本法とする」ことを明記するか
  9. 著作者人格権および実演家人格権の扱いについて
  10. 著作隣接権の扱いについて
  11. 合意管轄規定を入れるか
  12. ライセンス・バージョンをまたがる作品の管理について(米国CCと日本CCの作品が混同して使用された場合の取り扱いなど)
  13. 著作者死亡時の取り扱い(相続権の問題など)
  14. 期限限定ライセンスについて(需要の有無など)
  1. クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)を活動の拠点としています。

クリエイティブ・コモンズの意義

普通の財産権と異なり,著作権を含む知的財産権にはフェアユース(4)やファーストセルが利用者の権利として認められています。また知的財産権には「期限」があることも重要です。しかし一方で主に商業サイドからの強力な圧力によりこのバランスが崩れてきているのも事実です。この現象は米国で顕著ですが日本でも既に同様の事態になってきています。クリエイティブ・コモンズは著作(権)者の正当な権利を破棄させるものではないですし,利用者の(不正コピー等の)海賊行為を容認するものでもありません。クリエイティブ・コモンズは著作(権)者と利用者の間でお互いの権利範囲を明示し認識しあうことでこの失われたバランスを取り戻そうとするものです。

私達のほとんどは法律に関する専門知識を持ち合わせていないですし社会的に発言力のある有名人というわけでもありません。有力政治家にコネがあるという人も希でしょう。でも私達は何もできないわけではありません。もしネット上に公開しているコンテンツに書かれている著作権表記に「All Rights Reserved」と但し書きがあるのでしたら,その文言の意味するところについて今一度考えてみるチャンスです。自分がネットや利用者に対し何を提供し何を要求しようとしているのかライセンスプロジェクトを手がかりに考えて,解放可能な権利があればほんの少し制限を緩めて「Some Rights Reserved」を表明してください。クリエイティブ・コモンズを通じて提示されるライセンスは制限ではなく(著作(権)者による)アピールです。

多くの人にクリエイティブ・コモンズを機会に著作権について考えていただき(できれば)賛同し実行していただければ,それは全体で大きな流れになり(マスメディア等の誘導による「お祭り」ではない)本当の意味での「世論」になっていくと思います。

  1. 日本では法的には「フェアユース」は認められていません。ただし,類似の概念として権利制限条項(著作権法30条以下)が存在します。

謝辞および参考文献

まずクリエイティブ・コモンズおよびそのプロジェクトに対し最大限の敬意を表します。クリエイティブ・コモンズのWebコンテンツは「by」ライセンスの下に公開されています。

日本語の情報としてはMatさんによる「creative commons 日本語情報」から得られる情報が大変参考になりました。この場を借りてお礼申し上げます。「creative commons 日本語情報」で紹介されているものとしては,結城浩さんによる以下の翻訳コンテンツが特に分かりやすくてお薦めです。

ライセンスプロジェクトのツールの使い方については「バーチャルネット法律娘 真紀奈17歳」にある「Create Commonsと当サイトの著作権・リンク規定」を参考にさせていただきました。また神崎正英さん「クリエイティブ・コモンズのメタデータ」は本テキストにRDF情報を埋めこむ際に大変参考になりました。

書籍については是非Lawrence Lessig 教授の著書を読んでみて下さい。日本語のものは山形浩生さんの翻訳による以下の書籍がお薦めです。

iNTERNET magazine 2003年4月号にクリエイティブ・コモンズについての記事が掲載されました。この記事はクリエイティブ・コモンズの「by-nd-nc」ライセンスの下にPDF文書(5)で公開されています。

2003年6月,ついに「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」が公開されました。(節[クリエイティブ・コモンズ・ジャパン]参照)本テキストの訳語や用語は「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」で使用されているものを参考にしました。

節[表明保証条項]の問題についてはKarl-Friedrich Lenz 青山学院大学院法学部教授による論文『著作権とCreative Commons 実施権』(PDF)が参考になります。

  1. http://internet.impress.co.jp/im/pdf/cc.pdf

本テキストの著作権について

Copyright © Yasuhiro (Spiegel) ARAKAWA.

Creative Commons License
This work is licensed under a Creative Commons License. (RDF)

本テキストでは Creative CommonsAttribution (帰属)ライセンスの下で公開しています。 すなわちオリジナルのテキストが私「荒川靖弘」によるものであることを明示していただければ, 自由に再配布・再利用が可能です。

ライセンス情報のうち Digital Code については RSS(6) から取得できます。

  1. http://www.alles.or.jp/~spiegel/docs/cc-about.rdfHTML 表示

変更履歴

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2003年1月29日初版:

マスタ文書電子署名

取り敢えずリリース。

2003年2月5日Rev. 1.0.1:
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2003年2月18日Rev. 1.0.2:
マスタ文書電子署名
2003年3月14日Rev. 1.0.3:
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2003年6月8日Rev. 1.0.4:
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2003年9月15日Rev. 1.0.5:
マスタ文書電子署名