【写真】
序幕
「天童君、そろそろ起きなさい」
どこからか聞こえてくる声で、史朗は目を覚ました。
ぼんやりと目を開ける。目の前には校医の吉田真利子が、史朗の顔を覗き込むように
して立っていた。
今年で28になるという噂の真利子は、真直ぐな黒髪を常に後ろにまとめ、野暮ったい
黒駁眼鏡をどことなく色っぽくかけこなした、帝都高校の校医である。半年前に赴任した
ばかりだが、知的な雰囲気と誰にでも優しい性格が受け、生徒の間で人気があった。
史郎はぼんやりと、真利子の切れ長の目を見返す。
薄汚れた天井。白いカーテンで区切られたベット。カーテンの隙間からは、学校にあり
がちな無愛想なデザインの教師用の机と、その上には真利子が愛用するノートパソコンが
ちょこんと座っている。見なれた風景。たびたび授業を抜け出しては時間を潰している、
お馴染みの部屋。
「あふ‥‥‥ふあぁぁ〜」
史朗はノソノソと体を起こし、大欠伸をした。
人さし指でポリポリと耳たぶを掻く。半月前に開けたばかりのピアス用の穴は、まだ彼
には馴染んでいなかった。汗をかいた後などには、むずむずとした痒みを感じる。ちょう
ど今みたいに。
妙にぼぉっとする頭を無理に動かして、史朗は記憶をさぐった。
たしか、今日は昼休みが終わってから、ここに昼寝をしに来た。また来たわね、と笑う
真利子に軽く挨拶してから、定位置のベットに横たわり‥‥その後の記憶がない。
何だか大分眠っていたような気がする。時計を見ると、短針はすでに6の数字を指して
いた。
「いけね‥‥‥部活さぼっちまった」
サッカー部監督の呆れた顔を思い浮かべ、史朗はちろっと舌を出した。
「授業はさぼっても、部活はさぼるつもりはないって言う訳? 天童君らしいわね」
真利子は軽く笑うと、未だにベットから出ようとしない史朗をしっしと追い出して布団
を片付けに入った。いきなり暖かい布団からほうり出され、史朗は寒さにブルッと身を震
わせる。
「ほら、もう帰るわよ」
すでに帰宅の準備をしていたらしく、真利子は布団を片付けると、肩に鞄を下げ、史朗
をリードするようにして保健室を出た。しっかりと鍵をかけ、冷え込む空気の中にヒール
の音を響かせながら、さっさと廊下を進んで行く。史朗もその後を追い掛けるように昇降
口へと向かった。
「ほら、早く」
長身の真利子は、史郎とさほど背の高さが変わらない。二人は文字通り、肩を並べて歩
き出した。
「ふあぁぁ‥‥‥」
「あれだけ寝たのに、まだ眠そうね」
真利子に笑われ、史朗は重い頭を振る。体も妙にだるいし、頭も霞がかっているようで
はっきりしない。
「‥‥‥天童君って、意外と大人だったわね」
「え、何スか?」
「いえ、いいの」
真利子は不思議な笑みを浮かべた。
「帰りはどうするの? 途中までなら送っていってもいいけど?」
「あ、えーと‥‥‥」
できればこのまま車で送ってほしい所だったが、教室に荷物をそのまま残している事を
思い出した。勉強道具などは持って帰る事はしない史朗だが、今日は友だちに借りたCD
があった。首を横に振り、真利子の誘いを断わる。
「いや、いいっす。そのかわり、今度お茶にでも誘って下さい、真利子さん」
憧れの校医に軽口をたたく。真利子はそんな史朗に呆れた顔をしつつ、肩から下げた
バックの中から、一枚の封筒を取り出した。
「処方箋よ」
「はぁ?」
史朗は差し出された封筒を、いぶかしげな顔をしながら受けとった。健康優良、成績優
秀、スポーツ万能、態度最悪、容姿端麗(?)を自認する少年にとって、病院と処方箋は
無縁なものだった。
「家に帰ってから開けなさい」
頭の上に沢山の?マークを羅列させている史朗を置いて、吉田真利子は昇降口から外に
消えてしまった。
「何だろう‥‥‥‥ま、いいか」
史朗は友だちから借りたCDを取りに行くため、教室へ向かった。廊下にはすでに人っ
子一人いない。2ーBの札のかかった教室に入ると、自分の席の横にかけてある鞄をとっ
た。机の中にいれてあるCDを取り出し、封筒と一緒に中に入れようとして、ふと、その
手を止める。
家に帰ってから、と真利子は言っていたが、別に今開けても問題はないだろう。そう決
断を下すと、のり付けされていないほうの口から中身を取り出した。
「‥‥‥‥‥‥」
写真だった。
それだけなら、別に問題はない。
正方形の写真だった。
正方形と言う事は、ポラロイドで撮影されたものだという事を意味する。しかし、それ
だけならやはり問題はない。
その写真には史朗が写っていた。保健室のベットで、大の字になって横たわっていた。
それだけなら、やはり問題はない。肖像権の侵害という以外では。
問題は、その写真に写っている史朗が、一糸まとわぬ姿だった事だ。
第一幕
1、取り引き
「どういう事だよ、これはっ!!」
バンッ、と机に例の写真を封筒ごと叩きつけた天童史郎を、吉田真利子はノートパソコ
ンからちょっと顔を上げて一瞥した。
「あなたの写真よ」
分かり切った事を言う真利子に、史郎は食い付きそうなほどの怒りの視線を向け、詰め
寄る。
早春、早朝、保健室。
史郎は昨日受け取った、自分の卑猥な写真の真相を知るために、朝一番で学校にやって
きていた。
昨夜は何度も真利子のマンションに電話がかかってきてはいたが、真利子はそのすべて
を無視した。史郎からである事は分かっていたからだ。そうすれば彼は事情を聴くために
保健室へ来ざるをえなくなる。
「そんな事をきいてるんじゃない!」
「じゃぁ、何を聞きたいの?」
怒りに我を忘れている史郎。
一方の真利子はひどく冷静だ。彼の怒りなど片手で制せるとばかりに、自分の作業を続
けつつやり取りする。
「どんな写真か、私の口から聞きたいわけ?」
「そ、そうじゃなくて!」
史郎は額から流れる汗を拭い、怒鳴った。冬であるというのに、この部屋は妙に暑かっ
た。もっともあまりの怒りに我を忘れている彼は、そんな事は気付かなかった。と、いう
よりも、暑いのは自分が興奮しているせいだと感じていたのだ。それが真利子の作戦の一
つである事にも気付かずに。
「天童君が、あんまり気持ち良さそうに寝てるものだから」
「だからと言って、どうしてこういう事になるんだよっ!?」
「少し落ち着きなさい。頭に血がのぼりすぎよ」
「それはっ、先生がっ‥‥‥!!」
一度、大きく息を吐き、史郎はどっかと椅子に座った。鬱陶しそうに、耳たぶを掻く。
史朗は肩で息をしていた。大声で怒鳴り続けていたのだから当然だが。今が登校時間よ
り遥かに早く、保健室附近に誰もいないから良いものの、もし誰かいたら、彼のあまりの
大声に、何があったのかと興味本位で集まってきていただろう。
真利子は書類のデーターを保存し、ようやくパソコンから顔を上げ、真っ赤になって自
分を睨み付けている史郎を見遣った。
机の引き出しを開け、中からこ難しい名称が羅列されているラベルを張った薬瓶を取り
出し、史郎の前にかざす。
「天童君、これに見覚えがあるわよね?」
「あ、それは‥‥‥!」
「そう。君が昨日飲んだビタミン剤。本当は、睡眠薬なんだけど」
真利子はさらりと言って、椅子から立ち上がり、史郎が腰掛けている椅子のほうにやっ
てくると、彼の正面にまわり、机の上に腰かけた。
「睡眠薬ぅ!?」
史郎は素頓狂な声を上げた。
「そう、睡眠薬。ビタミン剤と称したら、何の疑いもなく飲み込んだわね」
真利子は昨日の、あまりに素直な史郎の行動を思い出し、くすっと笑った。
「計画的犯行、ってやつなのよ」
これ見よがしに、黒のストッキンングで包まれた足を組み上げる。史郎は真正面にある
真利子のむっちりとした太ももに視線を送り、慌てて自分を制した。いつもなら迷わず視
線を奪いとられるだろうが、今日は状況が違うのだ。
「天童君を、私のペットにしようと思って」
そうしてそんな事を、と尋く前に聞かされた、あまりに意外な真相に、史郎は我が耳を
疑った。英語教科書の発音練習のページに描かれた口腔画のように、口をパクパクさせて
しまう。
真利子はそんな史郎の様子に、自分が主導権を握った事を確信した。
「私の手持ちの写真は、天童君に渡した一枚を引けば、あと5枚。どう? 私のペットに
なって可愛がってもらうというのなら、写真は返してあげるわよ?」
立ち上がり、呆然とする史郎の頬に手を添え、なで摩る。
「な、何言ってるんだ!?」
史郎は慌てて真利子の手を払い除け、再び立ち上がった。
真利子は今まで見た事もないような、ねっとりとした視線を史郎に向ける。
その目に見竦められ、史郎は自分の背中に、何かぞくりとしたものが這い上がってくる
のを感じた。
「じょ、冗談はそこまで! 写真、あるなら返してくれよ!」
史郎はその視線に耐えられず、真利子に背を向けた。
しかし、それも真利子の計算のうちだった。
真利子は白衣のポケットに忍ばせておいた手錠を取り出し、素早く史郎の腕を掴んでひ
ねり、あっという間に史郎を後ろ手に拘束した。見事な手並みだった。
「な、何するんだっ!」
慌てて、じたばたもがく史郎。だが手錠は頑丈で、とても力でどうにかできるシロモノ
ではない。真利子はあばれる史郎を、彼の昼寝の定位置の、横並びに3つ並んだまん中の
ベットに引きずり込んだ。無論史郎は抵抗するが、手を拘束された上で襟刳を掴まれてい
るので、どうしようもない。真利子に引き摺られるままに、ベットの上に座らされた。
「これ、何だかわかる?」
真利子はくやしそうな顔の史郎の前に、新たな写真を突き付けた。何が映っているかは
確認するまでもないが、史郎はそれを見た。予想通り、それには全裸で寝そべった史郎が
写されている。ただし、前にもらったのとポーズは一緒だが、アングルが違った。
「どう? 下半身のほうから見上げるように撮ったから、前のよりもいやらしいでしょ
う?」
史郎はあまりの恥ずかしさに、視線をそらせてわなないた。
「こんなの学校の掲示板なんかに張り出されたら‥‥‥天童君、きっと困るわよね」
「な‥‥!?」
「さらにインターネットで公開したり、電子メールで無作為に送ったりしたら、きっと
もっと困るわよね?」
「こ、困るに決まってるだろ!」
こんな恥ずかしい写真を人に見られるのは堪え難い。そんな事されたら、もう学校には
来られない。親の顔、友人の顔、色々な顔が史郎の脳裏に浮かび、彼をさらに混乱させた。
「そうされたくないのなら、私のペットになりなさい」
真利子は羞恥で顔を真っ赤にする史郎を見て、淫猥な笑いを浮かべた。
憧れの先生に無情な裏切りをされて、史郎は悔しさの余りぎゅっと唇を噛む。
「どう? ペットになる?」
真利子は執拗に問うた。だが、ペットになれと言われて、はい、などと返事ができるわ
けがない。史郎は何とかして、真利子の主張の穴を探そうとした。だがこんな状況では冷
静な思考などできるわけもなかった。何の打開策も見つからない。
「黙っちゃって‥‥‥そんなに嫌なの?」
「あ、当たり前だよ!」
真利子はここらあたりでアメを出すことにした。子供の躾は飴と鞭、ペットもそれと同
じ事、が彼女の考えだ。
「じゃぁ、ペットにならなくていいわ」
「え?」
真利子の言葉に、史郎は一瞬安堵の表情を浮かべる。
「写真は5枚。だから、その枚数だけ耐えればいいわ。一日のイタズラに対し、写真一枚
というのはどう?」
「‥‥!」
史郎はさらに顔を真っ赤にさせた。つまりは期間限定のペットになれという事だ。
「冗談じゃない!」
当然ながら、史郎は拒否する。
「譲歩案ものめないのかしら。仕方ないわねぇ、納得しない子を犯すのは、本当は趣味じ
ゃないんだけど‥‥‥」
真利子はいつまでたっても了解しない史郎の首筋に息を吹き掛け、耳たぶを優しく噛ん
だ。ただでさえかゆみで敏感になっていた場所を噛まれ、史朗はぞくっと身を震わせた。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「もう一度、よく考えなさい、天童君」
「‥‥‥‥‥」
「私は、このままあなたを思うままに弄ぶことが出来るのよ。写真の一枚も返さずにね。
だけど、もしあなたが私の言う事を聞くのなら、同じ事をされても写真は返してもらえ
る。‥‥‥‥あなたにとって、どちらが得かしら?」
加害者の最後通告。
被害者にとっては選択権のない選択。
史郎はしばらく真利子の腕の中で考え込み、そして、口を開いた。
「わ、分かった‥‥‥」
真利子は少年の返事を聞き、ほくそ笑んだ。
「そう、私との取り引きを受けるのね?」
「う、受けるから‥‥‥ちゃんと写真は返してくれよ!」
「大声ださなくても聞こえるわよ。‥‥‥そうね、史郎」
史郎は真利子に初めて呼び捨てにされ、何だか突然悲しくなった。今までにもふざけて
俺の事は名前で呼んでくれよ、と言った事はあったが、真利子は決してそれにのる事はな
かったのだ。それが今こうして現実になった。こんな形で。
「これからは、二人っきりの時は私の事を真利子様と呼びなさい。それから、どんな時で
も敬語を使う事」
「‥‥‥‥‥」
「分かった?」
「は、はい‥‥‥分かりました」
返事をしながら、昨日まで憧れていた先生の本性に、史郎は心の中だけで泣いた。
2、遊技の始まり
史郎は真利子の手によって靴を抜がされ、ベットに寝かされた。御丁寧にも足まで縄で
括られてしまい、いよいよ逃げ出せなくなった。
長年合気道で鍛えている真利子であるから、運動部に所属しているとはいえ、格闘技の
経験のない少年を押さえ付ける事など造作もないが、寝技では少なくとも片手は使うので
こういう場合は不適切だし、それになにより、真利子は緊縛が好きだった。相手の自由を
徹底して奪った時、何とも言えない満足感と支配欲が彼女の中で満たされるのだった。
今回は本格的な緊縛ではないが、何と言っても相手が相手‥‥‥彼が保健室の常連にな
る前から、ずっと目をつけていた少年である。真利子は、まさに「捕らわれた獲物」のよ
うな史郎を見て、息が詰るかのような興奮を覚えた。
一方の獲物的立場の史郎は、ぎゅっと唇を噛み、何をされても声を出すか、と意地をは
っていた。目は剣呑な光を帯びたまま、まっすぐに真利子を見据える。
だが真利子にとっては彼のそんな様子は、さらに彼女を心のより奥底から刺激するエッ
センスにしかならなかった。
真利子は史郎の黒髪を優しく撫でた。その手から、かすかだが、鼻の粘膜をちくちく攻
撃するような、少し刺激の強い香りがした。数年前に流行った、真利子愛用の夜用香水
aphrodisiac。
真利子は今日のために入念な準備をしていた。視覚、嗅覚、聴覚、触覚、そのすべてが
男の性感を高める事を熟知している真利子である。いくらこまっしゃくれたへ理屈屋の史
郎であろうが、十七の少年ごとき、すぐに陥落できる自信が、彼女にはあった。
そしてその自信を裏付けるかのように、史郎の表情に一瞬だが恍惚としたものが浮かん
だ。こんな状況にもかかわらず。
それを見のがす真利子ではない。
まず、史郎の制服の上着を開き、そして一つ一つ、ゆっくりとシャツのボタンを外し出
した。体が少しづつ空気にさらされていく。
史郎に脱がされる屈辱を味あわせる為に、時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと、少年
の肌を露出させていった。指先で彼の体を、目で彼の悔しそうな表情を堪能する。
やがて、サッカー部でよく鍛えられた弾力豊かな筋肉と、少年らしいキメの細かい肌を
完全に外気に曝すと、真利子は唇で少年の胸板を愛撫しはじめた。史郎はぴくりと動いた
だけで何も言わない。ただ、目だけはしっかりと開かれていた。真利子がこれから何をす
るのか見定めるように。
(意地っ張りね、まぁ、その方が楽しめるわ)
両手で胸元を愛撫し、唾液をたっぷりと含ませた舌を喉元へと這わせる。史郎はその攻
めから逃れようと首を動かすが、真利子はすかさず、現れたほうの首筋へ舌を移動させた。
そのまましばらく首筋を攻める。
史郎は初めての感覚に戸惑い、食いしばった歯の奥から、かすかな息を漏らす。
「ふふ、史郎は首筋が弱いのかしら?」
真利子はそう言いながら、少年の最も恥ずかしい場所へ、手を伸ばし始める。
「‥‥‥!」
今まで以上に体を震わせる史郎。真利子はそんな彼の反応を楽しみながら、服の上から
少年の恥ずかしい所を撫でた。
「ふふふ‥‥‥声をだしたらどう?」
「‥‥‥‥‥」
だが、女に辱められているというこのうえない恥辱にも、史郎は屈しなかった。
しばらく撫で摩り続けていた真利子はそこから手を放し、顔を少年に近付ける。
「史郎、キスした事はある?」
十代半ばといえば、機会があればいつでもエッチしたい年頃だ。特にそういうものに興
味を持つのが人一倍早かった史郎である。その位は経験があった。
だが、彼は答えない。
真利子は特に気を悪くするわけでもなく、一気に史郎の唇にむしゃぶりついた。
史郎は一瞬何が起こったのか分からなかったが、咄嗟に唇をきつく閉め、真利子の舌の
侵入を拒んだ。だがそんな抵抗など真利子はお見通しだ。
絶妙なタイミングで、史郎の股間をつかみ、ぐっと握る。
「!?」
驚いた史郎は、とっさに叫ぼうとして口を開きかけた。真利子はその隙にするりと舌を
滑り込ませる。
うねうねと動き回る別の生き物が、口腔内を陵辱する。よっぽど真利子の舌に噛み付い
てやろうかと思ったが、そんな事をすればこの後どうなるか分からない恐怖と、いくら陵
辱者であれ、女性に傷を負わす事へのためらいがそうさせなかった。
やわらかな唇。
どこからか漂う香水の匂い。
口の中で這い回る舌に弄ばれ、史郎の頭は次第に真っ白になっていった。
今までこんなキスはしたことがない。気味悪さと妙な陶酔感に支配される。それだけ真
利子の舌技が絶妙なのだ。
だんだんと力が抜けて、真利子の舌がさらに奥へ行くのを許してしまう。
長い長いディープキスの後、ようやく真利子が唇を放した頃には、史郎の息は乱れ切っ
ていた。どこかとろんとした瞳を真利子に向ける。
「こういうキスは初めてでしょう?」
真利子は間をおかずに、もう一度史郎にキスをした。さっき以上に激しく舌を絡め、唾
液を嚥下させていく。再び唇を放した頃には、史郎は甘いため息を漏らすくらいまで陥落
されていた。
「可愛いわ‥‥‥‥史郎」
真利子は史郎のズボンのベルトを外し始めた。こんないい場面で、ファスナーだけを下
ろして露出させるような中途半端な事はしたくない。
下着と一緒に一気にずり下ろす。
キスの余韻で呆然としていた史郎だが、さすがにこれには正気づき、はっと息を飲んだ。
真利子はあらわになった少年の恥部を、真剣な顔で覗き込む。
「ふふ‥‥‥‥意外と大人なのよね」
真利子の評価に、史郎は死にたいくらいの恥ずかしさと、非難されなくて良かったと思
う心が混じりあい、何がなんだか分からないまま、ただ全身がかーっと熱くなるのを感じ
ていた。
真利子の評価通り、史郎の一物は、すでに大人への扉を開いていた。もっともそれは
『形』ばかりのものではあったが。
「あら‥‥‥」
真利子は史郎自身の鈴口に人さし指を這わせた。先が少しだが濡れている。どうやら
さっきのキスの成果らしい。
真利子は淫猥な笑みを浮かべて、史郎自身をしっかりと握り締めた。
「!!」
史郎はまた声をあげそうになり、ぐっと歯を食いしばる。
真利子は史郎自身に添えた右手を、最初はゆっくりとだが、次第に早くなるように擦り
始めた。
さらに、開いている左手で玉袋を揉み摩る。
(う、う、う‥‥‥)
史郎は、自分の恥ずかしい部分に真利子のひんやりとした指の感触を感じて、心の中で
呻いた。
「意地ははるだけ損よ」
史郎の心の葛藤などお見通しの真利子は、まるで子供を諭すかのような優しい声でささ
やいた。無論、手は休めずに。
しばらくその行為を続けていくと、史郎が甘い鼻息を漏らし始めた。体が小刻みに震え
ている。快感が屈辱を上まって少年の体を駆け巡っているようだ。その証拠に、彼自身の
ものは最初の頃よりも激しい自己主張を始めており、さらには除々に粘液さえ溢れ出させ
ていた。
真利子はそれを確認すると、かり首のあたりを舌でべろりと舐めた。
「あっ!」
さすがに耐えきれなかったのだろう。史郎がついに声を上げた。
真利子は心の中でほくそ笑むと、史郎にさらなる快楽を与えようと、口いっぱいに史郎
自身を頬張った。
「ち、ちょっと‥‥‥!!」
たまらず史郎が悲鳴を上げる。生まれて初めて受ける行為に、恥辱と快楽の波でもみく
ちゃにされている。
「気持ちいい?」
すぽんと口から抜き、人さし指で敏感な部分をぐりぐりと撫でながら真利子が問うと、
史郎はまるで子供が嫌々をするように首を横に振った。
真利子は舌を史郎自身にもどすと、竿の部分から先端の部分まで、まんべんなく舌を這
わせた。やがてまた口いっぱいに史郎自身をくわえると、チューッと吸ってきつく締め上
げ、緩め、そしてまた吸い上げる。
「‥‥‥ううっ‥‥‥はぁぁぁ‥‥‥」
体の奥からせりあがってくるような猛烈な快感に、史郎は体全体を痙攣させ、あえぎ声
を漏らし続けた。
「気持ちいい?」
愛撫を続ける真利子。きつく史郎自身を吸い上げたまま、上下に頭を動かし始めた。
「うっ‥‥はぁあ‥‥‥ち、畜生、こんなこと‥‥‥はあ‥‥‥!」
心は拒否しているのに、体はその意志に反して、どんどん真利子が与える快感を受け入
れてしまう。嫌だとはいうものの、あまりの気持ち良さに、最初の意地も続かず、ひっき
りなしに真利子を喜ばせるような声をあげてしまうのだ。
快感を甘受している史郎を見て、真利子は満足気に微笑むと、史郎をイカせるべく愛撫
のスピードを上げた。
「ひ‥‥‥ああ‥‥‥はぁ、はぁ‥‥‥」
史郎のあえぎ声が、切羽詰まったものに変わってくる。真利子はニ、三度じらすように
愛撫のピッチを落としつつ、確実に彼を追い詰めていった。
「はぁ、あ、もう‥‥‥!!」
史郎は大きく叫ぶと、びくんびくんと体を痙攣させ、生まれて初めての他人による絶頂
を迎えた。
真利子は素早く舌を下げ、噴射を受け入れる準備にはいった。彼の敗北の証である白濁
した粘液を、ごくりごくりと咽を鳴らして飲み下していく。
「くっ‥‥‥」
自分の敗北を知り、打ちのめされる史郎。
やがて噴射が完全に終わると、真利子は顔をあげた。舌舐めずりをするように、唇の回
りをなめすくう。その姿は、御馳走を満喫した肉食獣のような迫力があった。
普段の知的な真利子からは考えられないような、牝獣の表情。
「どう? 気持ち良かった?」
「‥‥‥‥」
史郎は屈辱感に身を震わせるだけで返事をしない。
「気持ち良くなかったの? じゃあ、さっき私が飲み込んだものは何だったのかしら?」
「‥‥‥‥」
「ねぇ、気持ち良かった?」
真利子は史郎の敗北を知っていて、いたぶるように質問をくり返す。その執拗な態度
に、史郎はついに観念して、小さく頷いた。
「気持ち良かった?」
だが真利子はその返事を口で言わせたいらしく、史郎の無言の答えを無視し、何度も質
問をくり返した。
だんまりを守る史朗を見て、真利子は左手をぐぐっと彼の股間に潜らせると、そのまま
人指し指を菊蕾に差し込んだ。
「ひっ!」
突然の行為と苦痛に、史朗はたまらず声あげる。
「ねぇ、気持ち良かった?」
真利子は、まるで自分は何もしていません、みたいな顔をしたまま、史朗を弄んだ。人
差し指を強引なまでに動めかせ、セピアの門を刺激する。
「ちょっ‥‥‥い、痛い! 先生!!」
まさかそんな事をされるとは思わなかったし、そんな知識もなかった。苦痛から逃れよ
うにも体は自由にならないままだ。史朗はこの拷問とも言える苦痛と屈辱に、完全に諦め
て口を開いた。
「き、気持ち‥‥‥良かった‥‥‥です」
「ふふふ、自分でするより、いいでしょう?」
「は、はい」
言った後、これ以上はないというくらいに真っ赤になる史郎。真利子は満足げに笑って
史朗を攻め立てていた指を抜く。心底安心したようなため息が聞こえた。
「そのうち、ここも気持ち良くなるように、訓練してあげる」
焦る事はないのだと、真利子は自分に言い聞かせた。写真は、まだあと4枚もあるのだ
から。
「ペットは常に可愛くあれ、よ。さあ、今日の分のご褒美よ」
「‥‥ぐ‥‥‥‥」
史郎は、未だ手錠も足枷も外してもらえないまま、真利子によってくわえさせられた写
真を文字通り噛み締め、残りのあと4枚の写真を思い、気が遠くなるような思いを感じた。
そして、真利子の手は、再び史郎の股間に移動していった。
結局その後も、真利子自身は白衣の裾すら乱れさせないまま、たて続けに2度も史郎に
快楽の悲鳴を発させると、授業が始まるから、という理由で彼を保健室から追い出した。
「おお、天童が遅刻しないなんて、珍しいなぁ、明日は大雨かぁ?」
普段だったら冗談の一つでも言い返す史郎だったが、今日はただ笑ってやりすごすだけ
だった。担任は、そんな彼の態度に首をかしげるのであった。
窓ガラスが軽い音を立て始めた。雨が降ってきたようだ。
『明日から、毎日保健室へ来るのよ』
真利子の言葉を思い出し、史郎はぞくりと身を震わせた。
取り引きは、まだ終わっていない。
おしまい