SSRIとは、選択的(=Selective)セロトニン(=Serotonin)再取り込み(=Reuptake)阻害薬(=Inhibitor) のことです。脳の中にはいろいろな物質があり、精神や神経の機能に関係していますが、その中のセロトニンという物質に対する作用が強く、他の物質への影響は少ないとされているいくつかの薬剤をまとめて呼ぶ時に用いる名前です。SSRIに含まれる薬剤のうちフルオキセチンという薬が、うつ病の治療薬としてプロザックという商品名でアメリカで有名になりました。
日本ではSSRIに含まれる薬剤で現在発売されているものはありませんが、フルボキサミンという薬が早ければ年内(1998年)にも発売され、医師が処方できるようになるのではないかと言われています。フルボキサミンはSSRIに含まれますが、有名になったプロザックとは別の薬剤です。他にも現在、日本ではセルトラリンやパロキセチンなどというSSRIに含まれる薬剤の臨床試験が進められていますので、効果がはっきりすればいずれ発売になる可能性があります。
SSRIに含まれる薬剤の日本における臨床試験の結果の一部はすでに公表されています。それをみた印象を言えば、すでに日本で広く使われている3環系抗うつ薬と呼ばれる薬剤(トリプタノール、トフラニールなど)と比べて、うつ病に対する効果は多少弱めで、副作用の種類は少し異なるというところでしょうか。3環系抗うつ薬では眠気、立ちくらみ、便秘など多彩な副作用が出ますが、SSRIでは頭痛や下痢がみられるようです。患者さんによって、例えば立ちくらみがでやすいけれど、下痢は出にくいというように、副作用の出やすさにちがいがありますから、そのあたりを考えるとSSRIの方が向いている患者さんも少なくないと思います。しかし、一部の報道で”夢の薬”であるかのようにとりあげられているようですが、私が精神科医としてこれまでに発表されているデータを見た限り、それほど画期的な薬剤であるという印象はありません。
いずれ新しい抗うつ薬としてSSRIが発売された時、精神科だけでなく内科など他の科でも、患者さんの「ゆううつである」という悩みに応じて、たくさん処方される可能性があります。しかし、新しい薬剤には臨床試験の段階では予想できなかった副作用が出る可能性もありますし、発売直後は本当に効果があるかを確かめる時期であるとも言えます。だから、少なくとも発売後1年間位は、うつ病に通じていて、これまで発売されている抗うつ薬を使い慣れている専門家が処方すべきでしょう。 以上