不安神経症と言われて半年以上同じ医師にかかっているが、症状がよくならない。病院を変えた方がよいか。
体の病気であれ、心の病気であれ、どんなに適切な治療をしても治りにくいものがあります。病院を変えるかどうかは、「よくなる、よくならない」よりも、「その病気を専門にしている医師の治療を受けているかどうか」によると思います。不安神経症を専門にしているのは精神科医ですから、以下のように考えて下さればよいでしょう。
まず、現在かかっている医師が内科医など精神科以外の医師であれば、一度、精神科医の診察を受けることをお勧めします。精神面の症状をきちんと現在の先生に話して、精神科を受診したいことを伝えて下さい。できるだけこれまでのんでいた薬などについて紹介状をもらってきて下さい。紹介状があると、その後の治療に役立つだけでなく、大学病院などでは事務的な手続きも円滑に運びます。
その先生がどの程度精神科を専門としているかわからないし、病院を変わりたいとも言い出しにくいことは少なくないと思います。一方、「一度、大学病院や総合病院でみてもらいたい」と話したら、意外とすんなりことが進んで、紹介状をもらえたという話もよく耳にします。医師の方も「精神科受診を勧めたかったが、勧めるのも悪いような気がしていた」ということも多いようです。もしどうしても言い出しにくければ、紹介状はなくても、とりあえず別の病院の精神科を受診していただくのがよいでしょう。これまでの経過や治療内容をうかがえば、現在の医師が精神科の専門家かどうかはだいたいわかりますので、引き続き現在の医師にみてもらうのがよいか、病院を変わるのがよいかアドバイスできると思います。
現在かかっている医師が精神科医であれば、例えば入院が必要である、特殊な検査が必要である、などの理由でその医師が別の病院に行くことを勧めない限り、患者さんの方から病院を変える必要はないことが多いようです。ただどうしても心配であれば、別の病院で話を聞くのもよいでしょう。もしちがう治療方針の説明を受けたとすれば、どちらで治療を続けるかを考えてよいと思います。
医師とはちがいますが、現在、サイコロジストやカウンセラーの治療を受けているという方がいます。もし症状がよくならず、かつ、もしこれまで一度も精神科医の診察を受けたことがないようであれば、一度精神科医を受診しておいた方がよいと思います。
「病院を変える」ことはそれまで続けてきた治療が中断することですから、適切でない場合、マイナス面の方が大きくなります。症状がよくならないと、ついつい新しい医師は違う治療をしてくれるのではないかと期待しがちですが、プラスとマイナスを慎重に考えて欲しいところです。
それと精神科での治療特有の問題として、治療で心の問題を見つめるような面接が進んでくると、患者さん自身が「考えたくないこともしっかり考えて、心の問題を越えていかなければならないような苦しい状況」を通る必要が出てくることがあります。このような時期には「あの先生にかかってもつらいだけだから病院を変えたい」と考えがちですが、実は治療上、最も重要な時期なのです。病院を変えることを希望して来られた患者さんから詳しくお話をうかがうと、現在の精神科医の治療がこういう局面にさしかかっていると考えられることも少なくありません。この場合、この時期に病院を変えることはそれまでの治療を台無しにしてしまう可能性があります。 以上。
誰かが精神的な病気になった場合、その家族の苦労が大きい。どんなふうに考えて対処すればよいか。
精神的な問題をかかえた患者さんがいるご家庭では、患者さん自身の病気との戦いとともにご家族の混乱や悩みも大変なものであることは、体の病気と同じです。ご家族の方が精神的に、あるいは身体的にまいってしまい、患者さんに対して一時的な入院などを考えないといけないことも少なくありません。どのように対処するかに名案があるはずもないのですが、以下の点は少し頭に置いていただければと思います。
第一に病気が理解しにくいものであるほど、周囲の方の混乱や悩みが深まります。精神面の病気は体の病気よりも理解しにくいため、よけいにご家族の苦悩が強まる面があるようです。その病気とか患者さんの状態をどう考えたらよいかについて、主治医に徹底的に質問して下さい。現在の医学でわかっていないことが多いのも事実ですが、わかっていないことはわかっていないときちんと説明してもらえばよいと思います。主治医以外にも、専門的な知識をもったいろいろな人の意見を聞くのは悪くありませんが、「精神医学の知識のない人が素人的な常識で話されたこと」には振り回されないで下さい。近所の方やお友達が「精神の薬なんて早くやめないとくせになるよ」と言うのを聞いて、よりいっそう悩んでいるご家族に出会ったことがあります。精神の問題は専門的な知識がなくても何か意見がいえそうに思える所にも落とし穴があります。
第二に患者さんの状態が病気であると理解してあげて欲しいと思います。ある不合理なことを言う人に接する時、実は病気と考えた方がよいのに、「こんなことを言うとはどんな性格なんだ」ととらえると周囲の混乱や悩みは強まります。「治療して病気を治すのであって、話し合って性格を治すのではない」と考えて欲しい気がします。
第三は少し細かい問題ですが、例えば思春期のうつ状態の患者さんがよくなるとともにそのお父さんの不安が強くなったり、拒食症の女の子の症状が改善するとともにそのお母さんがうつ状態になったりすることがあります。あたかもシーソ−のようであり、病気であるかのように見えた方の問題が、実はご家族全体の問題を誰が背負うかだけの問題であったと理解できることがあります。このような場合は、病気である患者さんに対処する苦労というよりは、家族の一員として自分も治療を受けているという気持ちで問題をとらえた方がよいようです。家族全体の治療であるという面がどの程度あるかは、患者さんによってちがいますから、主治医に尋ねて欲しいと思いますが、多かれ少なかれどのご家族にも見られるというのも事実と思います。
はじめに書いたように名案はありませんが、すべてを解決に導く答えは得られないとしても主治医はよく利用して下さい。 以上。