精神科医を活用する方法 

       <いただいたメールに関連して> 

どの程度の症状があれば精神科医に相談した方がよいか:何人かの方からメールをいただきました。「精神科医に相談した方がよいような気もするが、それほどでもないように思う」とか「気持ちを書いているうちに落ちついてくる」などと言われる方が多かったように思います。「こうした方がいいと思います」と断言できるほどの情報は書かれていませんし、メールでそれを判断することは無理ですが、どのメールもお話全体から推測して、一度、精神科医に相談されてはどうでしょうか。精神科医がこの程度であれば通わなくてもよいと言えばそれでよいでしょう。精神科医は通わなくてもよいと言ったが、自分ではやっぱり困るという時はそれを精神科医に伝えて下さい。2、3回通ってみたものの、この精神科医は役に立たないと思われたらやめるのも仕方ないかと思います。それと自分は精神科なんかへ行く必要はないと思うけれど、家族は行くことを勧めるという場合、ご本人とご家族と精神科医とで、どうかもう一度よく話し合ってみて下さい。以上。

ゆううつ感、不安、拒食症症状、対人恐怖症状などいろいろな症状がある時、どんな病名がつくのか:例えばうつ病であればゆううつ感だけではなく、不安感や食欲不振などの症状があるのが普通です。対人恐怖症であってもゆううつ感をしばしば伴いますし、時には体の病気を過度に心配するような症状(心気症状と呼びます)が出ます。精神科の病気ではひとつだけの症状を認めることは少なく、いろいろな症状が出ることの方が多いと思います。このような方を診察する場合、精神科医は最も根本にある問題を探り、それにもとづいて診断を決定し、治療に当たることになります。

 精神症状の中でゆううつ感、不安感、拒食症状などは一般の方にも有名ですが、専門家以外はあまり知らないような症状もあり、時にはそちらの方が治療のために重要なこともあります。このような理由から、患者さんが知っている症状の知識の範囲だけで「自分は○○症」だと、自分で判断するのは適切でないと思います。以上。

精神的な問題は徹底的に自問自答した方がよいのか:精神的な問題ですから、自分でいろいろ考えるのはとても重要です。しかしうつ病などの病気では治療中の一定期間はあまり自分なりに考え込まず、薬を飲んで休養をとって欲しい、そしてその後、いろいろ考えて欲しいとアドバイスすることが少なくありません。

 もし自分なりにいろいろ考えるにしても、だいたい考え込む時期というのは考えがまとまらない時期ではないでしょうか。こういう時期は、考えるにしても、誰かにある程度話を聞いてもらいながら、自分なりの思いこみに走らないよう手助けしてもらった方がよいように思います。例えば精神科外来でも、患者さんが自分なりに考えたことを話されて、精神科医が特に何かをアドバイスする訳ではないのですが、考えの道筋を交通整理するような感じになることはよくあります。

 「自分なりに考える」ことは重要ですが、「徹底的に自問自答」と言われると少し違います。「誰かに聞いてもらいながら考える」とすれば適切なことが多いように思います。以上。

最近発売中止になった脳の代謝に関する薬は本当に効かないのか:これはとても難しい話であり、私も直接の専門ではありませんので、簡単に書かせて下さい。「従来、効果があるとされていた薬と有効成分が全く入ってないものを患者さんにのんでいただいた所、どちらもある程度の割合の患者さんに対しては効果があったが、両方の間で効き目に意味のある差がなかった」というのが今回の臨床試験の結果であると思います。今回発売中止になった薬も発売された時には「効果がある」と判定されていますが、その結論が導き出された臨床試験の方法と今回の方法は全く同じとはいえません。

 「本当に効かないのか」という質問の答えは、今回の臨床試験の限りでは、「薬の成分の全く入ってない粉と同じ効果しかなかった」ということでしょう。しかし発売当時の試験では「効果がある」と判定されています。またいろいろな領域で新しい薬がどんどん開発され、世の中に出ています。、なぜこのような結論のちがいが生じたかを十分に検討して発表していくことは、この領域に関わる医師の義務だと思います。以上。

 

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