新緑が輝く頃になると、今まで体の中で大人しくしていた山遊びの虫がもぞもぞと動きだし、どうにもこうにもいたたまれなくなることがある。ついこの間も、突如思い立ったように家を飛び出したのであった。目的地も曖昧に中央道を西に向かったのだが、ふと思いついて水晶峠へと登ってみた。
季節は梅雨のはしり。淡い緑色に輝くシダの絨毯を歩くと、水晶峠へ続く山道はシャクナゲのオンパレード。花崗岩の白い岩肌には、赤紫色の山ツツジが映える。峠は大きな沢をはさんで反対側だ。坂道を下りきった沢には、透き通った清流が足下を洗っていた。
渓谷を洗う沢は、水が冷たい。沢には、やまめ釣りのおじさんが先行していた。昔に比べて、数が少なくなったという。それでも今日は3匹つり上げたそうな。
今は昔。水晶峠は名前の通り、かつて水晶の採掘でにぎわったところだ。往事は百もの抗口がつけられ、50を越える坑夫が働いていたという。掘り出された水晶は、下流の景勝地・昇仙峡でおみやげとして売られていたらしい。現在、峠は森閑とした木立の中に、ひっそりと埋もれている。
早速、ズリの表面を丁寧に眺めていく。意外と人が来ていないようで、小さな水晶がそこここに落ちている。本格的に石掘りをしようと思って来たわけでもないので、これといった道具もない。一緒にいった仲間と水晶拾いを興じる。小一時間もしないうちに、小さな水晶の群晶、透明度の高い水晶の頭、親指大のものなどを発見。ポケットにしまい込む。といっても、とてもコレクションとして並べるほどのものではないのだが。それでも、久しぶりに遊びを思い出したように、わくわくしてしまった。
で、これが成果品。特別すごいものが採れたわけでもなく、ただ、楽しんできたというだけなのだが、石を求めて歩く旅もまた、石堀りの楽しみではないだろうか?石堀りの楽しみには、十分に旅の要素が含まれていると思う。
なお、水晶の下のコースターは約10cmである。
報告;高嶋恒太