殊能将之
ハサミ男
ハサミ男(殊能将之)
「連続美少女殺人事件。死体ののどに突き立てられたハサミ。その残虐性から「ハサミ男」と名づけられたシリアル・キラーが、自分の犯行を真似た第三の殺人の真犯人を捜す羽目に……。殺人願望と自殺願望という狂気の狭間から、冷徹な眼で、人の心の闇を抉るハサミ男。端麗なる謎!ミステリ界に妖しい涼風が!」(講談社ノベルズあらすじより)
なんだいその妖しい涼風ってのは。と、しょっぱなツッコミを入れつつ今作品、第13回メフィスト賞受賞作だったり、その内容から結構注目されてたモノ。なんせ主人公はシリアル・キラーなんて設定ですから。
舞台は東京。ときには雑誌社でもくもくと働くアルバイト、ときには自殺願望者、そしてときには世間を騒がす殺人犯”ハサミ男”、と多種多様な面をもつ主人公。物語は主人公の視点からと”ハサミ男”を追う他者の視点からの交互で進んでいく。第3の殺人のターゲットを絞った”ハサミ男”だったが、ターゲットの女子高生の身辺を調査するうちに何者かによって先を越されてしまう。しかも絞殺後に尖ったハサミを咽喉に突き刺すという全く同じ手口で。ターゲットを他人に殺され、ちょっとがっかりの”ハサミ男”だったが、別人格である”医師”によって真犯人を見つけるように唆される。自殺を繰り返しながらも、いやいや真犯人探しをする”ハサミ男”だったが、ターゲットの女子高生の人間関係を探るうちに徐々に彼女の謎の行動が判明していく。一方、警察も容疑者を”ハサミ男”と半ば断定し、捜査に乗り出すのだが…。真犯人はいったい何者か。”ハサミ男”は警察の捜査の目を掻い潜り、真犯人を突き止められるのだろうか。
という内容です。面白そうでしょ?というか、面白かった。最初はクライム・ノベルズぽいのかな?と思いつつ読んでいったのですがちょっと違う。この”ハサミ男”には別の人格(というか妄想?分身?)である”医師”が存在し、何かと”ハサミ男”に詭弁ぽいちょっかいばかりをする。どっちが主人格なんだか分からないくらい”医師”のほうが先手を取り捲る。あと、主人公には自殺願望があり、色々と自殺を試すわけだがことごとく失敗していく。その辺がある意味面白げ。そんだけやっても死ねない(というか死なない)”ハサミ男”は悪運が強いとしか言いようがないだろう。
警察の捜査陣もなかなか面白い。みな特徴のある人物であり、ミステリでよく出てくるアタマの硬い(ミステリではアタマの悪い、と解釈すべきであろう)ステレオ・タイプの刑事ではなく、一癖も二癖もある刑事ばかり。そのあたりも楽しめること請け合い。
さて、まとめてみますと非常に書けてるな、というカンジ。必要なところは書いてあり、またぼやけてるところはあいまいに、というメリハリが効いてるトコロなど読んでいて非常にヨロシイ。この効果が全貌が明らかになるにつれて分かってくるに違いない。一度だまされたと思って読んでください。
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