合併浄化槽
                          (効率的だが進むぬ導入”下水道信仰”が阻害)

  
                 全町整備で事業費減

 「下水道に固執する必要はないんですよ」秋田県二ツ井町の丸岡一直町長は言う。同町は1995年下水道の整備計画を白紙に戻し、全町を合併浄化槽だけで整備することを決めた。
 県北部に位置し、人口12000人、世帯数3650戸。基幹産業の農林業が衰退し、人口の3割以上を高齢者が占める典型的な過疎の町だ。93年に就任した丸岡町長は、事業費204億円、国の補助金を除いた実質支出46億円という下水道計画の見直しに乗り出した。財政負担や浄化能力、成果が出るまでの期間などを徹底的に検討し、合併浄化槽という結論に達したという。
 事業費は1/4の51億円、町の実質支出は22億円にまで減った地形に関係なく設置できるので中心部と山間部の地域的不公平もない。今年3月末で普及率は25%。2015年までに全戸に設置を目指している。


        山間部、過疎地で注目

                                           

 住宅が集中する都市部では汚水を1ヶ所に集めて処理する下水道は確かに効率的だ。ところが、集落が点在する山間部や過疎地では非効率的となる。こうした地域を抱える自治体では整備に膨大な費用と時間がかかる下水道よりも安くて短時間で設置できる合併浄化槽への注目が高まっている。
 2001年度、合併浄化槽を整備している人口は全人口の7.6%だが、このところ汚水処理施設の整備計画を見直して合併浄化槽を取り入れる自治体が増えている。環境省の調べでは、昨年末時点で24都道府県が整備計画を見直し中で、大半が合併浄化槽の増加を検討しているという。
 さらに、住民側から下水道に「ノー」を突きつける動きも出てきた。神奈川県葉山町では、下水道工事は税金の無駄使いなどとして、住民5人が工事差し止めなどを求め、町長を提訴した。「町長の裁量権の乱用といえない」として1審2審とも敗訴したが、住民側は最高裁に上告中だ。同様の裁判は、岐阜県北方町や輪之内町でも起きている。


                  問題は保守管理
                                           

 ただ、合併浄化槽にも問題点はある。各家庭ごとに設置されるため、定期的な消毒や槽内に溜まった汚泥の抜き取りなどの管理を怠ると未処理排水が河川に流れる危険性があると指摘される。
 環境省は94年度、各家庭から設置スペースを借り受けた自治体が、合併浄化槽の整備・維持管理を行う「市町村設置型」の事業をスタートさせた。手厚い補助があるため、設置する際の個人負担は従来の「個人設置型」に比べ少なくてすむ。保守管理や検査代として毎月2000円程度必要だが、槽の管理は徹底される。昨年3月末までに118市町村で実施している。
 今年度からは、過疎地などに限定されていた補助対象地域を下水道などの集合処理に比べて合併浄化槽による汚水処理が効率的と環境省が認める地域すべてに拡大。実質的大半の市町村で、補助を受けるようになった。

 
                   行政の積極姿勢が必要
                                          

 こうした状況にもかかわらず、合併浄化槽の普及速度は遅い。要因の一つは単独浄化槽の存在だ。浄化槽法改正でし尿だけしか処理しない単独浄化槽は、2001年から新設が禁止された。しかし、合併浄化槽への切り替えが努力義務とされたため、寿命30年といわれる単独浄化槽はまだ多く残り、台所や風呂などの生活排水は浄化処理されないまま垂れ流されている。
 また、市民の”下水道信仰”も普及を阻害する要因となっている。環境省浄化槽推進室の小川真佐子室長補佐は「浄化槽に関する知識が浸透していないため、『下水道が1番』という意識は地方で根強い」と指摘する。地元に利益をもたらす公共工事として、下水道を手放したがらない自治体も多い。
 産業技術総合研究所の中西順子・科学物質リスク管理研究センター長は、「人口密度から見て、全国の4割の地域が下水道より合併浄化槽の方が効率的。そうした地域では『下水道は公共事業』という意識を捨て、行政は合併浄化槽を積極的に推進するべきだ」と訴える。

                                                                                                                                (読売新聞 5/1 朝刊)

 
                   浄化槽の必要性
                                          

  「下水道」では、合併浄化槽に関する声が多く届いた。整備に多額の費用と時間がかかる下水道に対し、安い費用で短期間で設置できる合併浄化槽を支持する意見が目立った。千葉県の現職町議は「農業集落排水中心に整備を進めているが、重い負担で財政破綻する恐れさえ考えられる」と危機感を持ち、合併浄化槽を積極的に採用している自治体から資料を取り寄せたという。合併浄化槽支持の女性は「先月行われた統一地方選挙で、この問題を取り上げる候補がいなかったのが残念」という。                  

                                               (読売新聞 5/15 朝刊)