広がる合併浄化槽
                                      (下水道より安く手軽に設置)

  
 家庭から出る汚水の処理に、合併浄化槽を活用する自治体が増えています。建設に時間もお金もかかる下水道に比べて、安く、手軽に設置できるからです。環境省はこの4月から助成対象区域を拡大し、普及をさらに後押しします

                 山梨県牧丘では個人負担1割
                                           自治体、普及を後押し

 ブドウの産地として知られる人口約6300人の山梨県牧丘町。ここで夫と娘の3人で暮らす山下栄子(58)は今年1月庭に合併浄化槽を埋設した。土地を提供する代わりに町が設置、管理してくれる「市町村設置型」なので総費用約100万円のうち個人負担は10万円ですんだ。このほかに、検査や掃除代として月3500円を町に支払っている。
 それまで、トイレの汚水だけ処理する単独浄化槽を使っていた山下さんは台所やふろの残り湯をそのまま川に流す仕組みが気になっていた。町に勧められ「経済的な負担も少なく、環境にもいい」と設置を決めた。
 町は88年に、下水道を整備する25年計画をたてていた。しかし00年計画を検討したところ、当初の総事業費15億円に加えさらに69億円が必要で、期間も50年かかることがわかった。
 浄化槽を選択肢に加え試算したところ、建設と維持管理で下水道は年1億4千万円、浄化槽は年1億800万円かかることが分かった。町は、中心部だけに下水道を造り、周辺地域は浄化槽を導入することに決めた。整備はあと10年ほどで終わりそうだという。
 牧丘町と、笛吹川、富士川を介して結ばれている静岡県富士川町は、昨秋、近隣2町と進めていた広域下水道計画から離れ、浄化槽への転換を決めた。理由は財政難。町議会も全員浄化槽を支持した。
 3年前から各地を訪ねて下水道整備について調べた同町議の渡辺英樹さんは「調査した町はどこも建設費が計画時の2倍以上に膨らんで苦しんでいた。下水道への疑問がつのった」と話す。

 
                  財政圧迫の下水道からの転換
                                          21府県が「見直し中」

 全国で汚水を処理している人口に占める割合(汚水処理率)は64.7%。このうち55.7%を下水道が占める。
 下水道人口の集中する地域では効率的だが、国が目安としている1fあたり40人以上より人口密度の低い地域でも建設されている。人口が少ない汚水処理費も割高になる。使用料は自治体によって違うが、1家庭で月2千〜3千円が一般的だ。大半の自治体はこれだけでは採算がとれず、一般会計で赤字を補填している。その分は全国で8千億円(00年度)にのぼる。
 一方、合併浄化槽で処理している人数は7.2%。これまでは下水道の整備計画から外れた人口の少ない地域に限って導入されてきた。
 しかし、このところ自治体財政を圧迫する下水道建設の計画をやめたり、縮小したりして、費用の安い浄化槽に切り替える自治体が増えてきた市町村の計画のもととなる都道府県の基本計画の見直しも始まった。
 朝日新聞社の問合せに、今年1月の時点で、青森、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、山梨、福井、大阪、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、愛媛、高知、福岡、佐賀、熊本の21府県が見直し中と回答。多くが「前の計画より浄化槽が増えそう」と予想している。
 01年に見直しを終えた秋田県は「下水道や農業集落排水計画の1部を浄化槽に転換し、1244億円節約できる」静岡県も昨春、浄化槽を倍増させる計画を作った。
 環境省は浄化槽の導入を勧めている。今年4月から、牧丘町のように設置費の大半を自治体が負担する「市町村設置型」を認める地域を拡大する計画だ。
 これまでに下水道計画がなく、過疎法で指定された山村などに限定されていた条件を緩和。下水道など他の処理方法よりも効率がいいと環境省が認めれば導入する。補助にあてる同省の03年度予算案は66億円。02年度の3倍になった。田河慶太・浄化槽対策室長は「今後都市近郊の町でも導入が可能になる」という。
 北尾高嶺・豊橋技術化学大学教授(水質制御工)は「使ったその場で処理して自然にかえすのが汚水処理の本来のあり方。浄化槽は地震にも強いなどコスト以外の利点も多い」と話す。

                                                                                                                                (朝日新聞3/3朝刊)