経済教室NO.5  拡大するイスラム金融
                                   
Q そもそもイスラム金融とは。

A イスラム教の教義に基づいた金融手法のことを指します。その大きな特徴は、教典コーランが利子(リバーと呼ばれる)の受け取りを禁じていることから「金利」の概念がないということ、シャリア(法、規範)というイスラム法が禁じている対象には、投資や融資ができないという点にあります。
 禁止されている例としては、豚肉やアルコールに関連する事業をはじめ、賭博や武器などに関連したものも反宗教的なものとして排除されています。その歴史は以外に新しく、世界で最初の近代イスラム金融機関は、1975年のドバイ・イスラム銀行であるとされ、開始から30年余りしか経過していません。

Q 金利の概念がないのに、どうやって投資家や金融機関は利益を得るのか。

A ここがイスラム金融の重要な点です。イスラムの教えでは、実物商品が存在しない、お金の貸し借りだけのような金融取引は御法度です。
 しかし、形のある商品を仲介させた商品売買で利益を上げたり、事業出資することで配当を得ることは奨励されています。イスラム金融は、金利に相当しない、投資や商品を仲介させることで成り立っているのです。

Q 具体的には。

A
最も代表的な手法は、「ムラバハ(購買代行)」です。例えば、住宅を購入しようとしている人に対して、金融機関が直接融資をすることはできません。そこで、金融機関は住宅供給公社から住宅を一度買い取った上で、住宅価格に販売利潤(金利分に相当する手数料)を上乗せして住宅購入者に再販売するという仕組みを使います。
 住宅購入者は、分割で購入しても構いません。住宅という形のある商品を売買することになり、利息が生じるローンとは異なると見なされるのです。

Q 住宅の売買以外でも使われているのか。

A そうです。ムラバハによる金融取引は、幅広い商品取引に活用できることから一般的な金融手法として最も活用されています。地域差もあるようですが、中東などではムラバハによる金融取引が全体の6―7割を占めているという調査もあります。
 この他にも投資信託や銀行への預金運用に似た「ムダラバ(信託金融)」や事業への共同出資に似た「ムシャラカ(出資金融)」など、いくつかの金融手法があります。
 また、「スクーク(イスラム債)」と呼ばれる仕組みもあります。英国政府はイスラム圏との融和も考慮して、2012年に開催予定のロンドン夏季五輪の資金調達をスクークで行うことを発表しています。

Q 各国がイスラム金融を取り入れるのはなぜか。

A 1つには、急拡大している市場規模にあるといえるでしょう。イスラム金融はこの5―6年間で急速に成長しています。歴史が浅いことや、一般の金融取引のように統計があまり整備されていないことから正確に数字を把握することは難しいのですが、年間15%程度の伸び率で拡大し、世界のイスラム金融の現在の市場規模は1兆j(約107兆円)に達しているとの試算もあります。
 市場規模拡大の背景には、原油価格の高騰による産油国の富の増加があります。それらは「オイルマネー」と呼ばれ、産油国が石油輸出で年間に稼ぎ出す額は5000億j(約54兆円)といわれています。
 これまでオイルマネーは主に産油国域外で、株式投資のような一般的な金融手法で運用されてきたのですが、世界的な経済の活況とイスラム金融の発達が重なる形となり、市場規模が拡大していったと考えられます。それらは、イスラム債の引受額が増加していることと原油価格の高騰がほぼ一致していることからも確認できます。

Q 国内での動きはどうなっているのか。

A 日本にとって東証とアブダビ証券取引所との業務提携が初めての試みです。東証はイスラム教が禁止した銀行業務やアルコールなどを扱う銘柄を除いたイスラム投資家向けの株価指数昨年11月に開発しています。
 提携について斉藤惇東証社長は「アブダビの石油の6割が日本に来ており、アブダビと日本はお互いに重要なお客さん。お金がある国なので、そのお金を東京資本市場の活性化に使えないかという考えを持っていた」と述べています。
 世界の金融センター間で競争が激化していく中で日本市場が生き残っていくためには、イスラム圏から資金を呼び込めるかどうかが、重要なカギになっているのです。
 このため金融庁は昨年12月に「金融・資本市場競争力強化プラン」を策定。銀行や保険会社グループの業務範囲規制の緩和を行い、グループ会社によるイスラム金融の取扱いを解禁する方向で検討しています。


公明新聞記事(H20. 2. 18)より転載