ロンドン交響楽団および日本フィルハーモニー交響楽団による
音楽教育プログラム
日本フィルハーモニー交響楽団 松岡 裕雅
先日、大阪教育大学付属池田中学校において、新しい音楽教育プロジェクトが行われた。
このプロジェクトは、ロンドン交響楽団によって開発されたプロジェクトで、日本においては、日本フィルハーモニー交響楽団も参加している。
英国でも昨今そうであるらしいが音楽を(特にクラシックやジャズ)遠い難しい物に考え敬遠する子供たちが増えている、という問題を解決すべく開発されたプロジェクトである。
池田中学校は、当プロジェクトの提案者であるマイケル・スペンサー氏と関係のあるホーリークロスコンベントスクールと姉妹校であり、これまでマルチメディア通信を用いた国際交流学習を行っており、今回、ロンドンのホーリースクールと池田中学校とをテレビ会議という形でリアルタイムで結んだプロジェクトが実現することになった。
日本側で参加する事になった我々であるが、当日の打ち合わせで、このプロジェクトの経験者であるロンドン在住のクマ・原田氏からこのプロジェクトでの最大のポイントは、教えないことである!とのみ教えられ当日のワークショップははじまった。
今回のワークショップでのテーマはペンタトニックである。
まず、はじめに子供たちとは、それぞれに好きな楽器をもってもらい(おおむね打楽器)ゲームをしたりしながら我々とのコミュニケーションまた楽器とのコミュニケーションをとった。
その後今回のテーマであるペンタトニックを用いて作曲をして貰うわけだが、子供たちを2つのグループに分けて、それぞれのグループに我々が用意した物は、5音音階の音にマーキングをした鍵盤楽器のみ、あとはそれぞれ子供たちの持ち寄った打楽器類だけである。我々のやるべきことは、教えないこと!
子供たちには、それぞれマーキングした音だけで使って作れる短いメロディーを考えて貰いそれを覚え、さらにそれぞれが考えたメロディーから5つ位選び、その短いメロディーを創意工夫してつないで貰うといった感じで作曲してもらった。子供たちというのは実にきっかけさえ与えるといろいろ想像できるようで、我々既成概念に縛られた大人とは違ったいろんなアイデアで曲が出来ていった。
我々は当初何も教えない、というこのワークショップにいささか困惑して接していたわけだが、時間が経つとともにこのワークショップの意図がだんだんと理解出来るようになってきた。教えないことの中から本当の教育が見えてきた気がする。
今回のテーマはペンタトニックであるが、たとえどんなテーマであったとしても、もっと本質的な音楽を学習したに違いない。というのは子供たちはワークショップにおいておこなったことは、人のアイディアに耳を傾け考え、またいろいろなアイディアを賞賛し淘汰し、またそのアイディアを整理しまたその中でのそれぞれの役割を探した。これはある意味、情操教育ではないか!私はこれまでたびたび音楽教育は情操教育であるはずなのにそのようなことがまるで感じられないと思ってきました。
我々の今までの音楽教育というと、こちらから一方的に与える、たとえば鑑賞させたり論理を教えたり、これでは、興味の無い子供は全く無関心のままで過ごすのも尤もである。
このワークショップは一見クラス対抗の体育祭や学芸会的に感じる部分もあるかと思うが、ここで決定的に違うことは、決して順位や主役が発生しないことであろう。自由な想像に順位や主役などあるはずがない。このことによって、子供たちは、それぞれを深く思いやり、尊敬し、そしてさらにいろいろな想像への垣根も無くなり、遠い将来?芸術に接する大いなる動機付けにつながったと思う。
このワークショップにおいても、自分たちで成し遂げた喜びも相まってからか、子供たちの音楽に対する興味の起こり方は、特筆するに値するものだった。