被告の文献引用の問題点【表1】(最終準備書面添付資料)


 【表1】

被告提出文書名と頁数

被告の引用

被告によって利用された資料の原文及び文献データ

問題点

<被告準備書面(2)>2頁

 特に、境界性人格障害の患者のうち、知的水準をある程度有するか、あるいは高い人たち@(幸子の場合もこれにあたる)は、自己の内部にある衝動性や怒りを統率し、それを克服しようとする意志や知性を有しているが、Aそれがはからずしてコントロールの域を超えてしまBったり、衝動性を内面化するために、うつ気分や、特に虚無感が顕著に際だってくるC分離不安に基づくD甘えがE強Fく、当初はそれを前面には押し出してこなかったとしてもG治療関係を結Hぶと、治療者を全能視し、すぐに転移感情を示し、Iその恋愛感情が報われないと激しい爆発ないし行動、あるいは医者への激しい罵倒という形に至ってしまう。C

町澤静夫「境界例患者の内的世界」『境界例』河合隼雄・成田善弘編、日本評論社、1998年、53-70頁の、5657

「私は境界例患者は大きく二つに類型化できるように思う。一つは衝動性が顕著であり、自己表現が極めてとぼしいタイプである。そしてこのタイプは概して知的レベルが低い人が多いと思っている。もう一つは知的水準をある程度有するか、あるいは高い人たち@である。この人たちの場合には、衝動性は内面化され、それがむしろ虚無感やうつ気分、不安となっている。[中略]もう一つのボーダーラインタイプについては、私はこれを繊細型(sennsitive type)と呼んでいる。このタイプは自己の内部にある衝動性や怒りを統率し、それを克服しようとする意志や知性を有しているが、Aしかしそれが、はからずしてコントロールの枠を超えてしまBう。また衝動性を内面化するために、うつ気分や、とくに虚無感が顕著に際だってくる。Cそしてまた自己同一性の障害ないしそれに対する感受性も強いものである。さらに分離不安に基づくD依存心の強さ、つまり日本語でいうところの甘えがE極めて強Fいのであるが、それを前面に押し出してこないG。しかし治療関係を結Hべば、容易にこの甘えが強いことがわかり、治療者を全能視し、すぐに転移感情を示し、Iそしてその恋愛感情が報われないと激しい爆発ないし行動、あるいは医者への激しい罵倒というかたちに至ってしまうJものである。しかしそこまで追い込まれない限りは、あまり衝動というものは出てこず、虚無感と自己同一性の障害に悩んでいるといっていい人たちである。

 

引用した原文に下線を引いた箇所と番号があるが、それらは、被告が流用した文言と対応している。

 

1、原文は、町澤静夫医師独自の境界例に関する見解であり、これが一般的なものであるとは到底言えない。

2、左を見れば明らかなように、被告の文章は、町澤氏の文章にある文言を断片的につなぎ合わせているだけである。

3、被告は、「しかしそこまで追い込まれない限りは、あまり衝動というものは出てこず、虚無感と自己同一性の障害に悩んでいるといっていい人たちである」という一文を削除した。

 町澤氏が指摘する通りであれば、境界例は、「追い込まれない限り」は、「虚無感と自己同一性の障害」について悩んでいる、というレベルにとどまることになる。

 被告はこの部分を削除し、他補文章をつなぎ合わせることで、境界例患者に対処することは困難である、という側面だけを強調している。

 

 

 



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