精神医療による医原症(=iatrogenie)とは何か? 定義と対応策



1、医原症とは?

 広い意味での医原症とは、医師が自らの行為または不作為によって引き起こす疾病またはその増悪(=悪化)である。
 大きく分けて、身体医学的・身体因性のものと、精神医学的・心因性のものに区別できる。近年では、薬物療法、外科手術、放射線療法などの医療行為一般によって生じた身体的障害を指す広い概念として使われている。

2、精神医学的・心因性の医原症とは?

 「医師の検査、態度、あるいは説明などに起因する、患者の自己暗示によって惹起された病気」という定義がある(A・Hurst, 1932の定義による)。

 主として、医師の言動がその原因として問題になる。しかし、看護師などパラメディカル・スタッフなどによる言動も、原因として含まれる。

3、医原症はなぜ起きる?

 1)医師の不作為であるにもかかわらず、「患者のせい」だと医師が主張するケース

 病人であるがゆえの不安・視野の狭さ・自分の健康に異常なほど心配する傾向・暗示にかかりやすい傾向などは、しばしば、医療サイドが、医原症における患者側の「原因」としてあげるものである。
 しかし、これらはみな、治療サイドが把握し、対応策を検討すべき課題である。
 したがって、「患者に原因があって医原病が起きる」という主張は成り立たない。

 治療サイドが、これらの問題点に、わかっていながら注意しなかった、ということになるのであるから、上記にある通り、「医師の不作為」にあたる。

 したがって、厳密に言えば、医原症において「患者側の要因」は存在しない。


2)医師側の要因:医原症の原因
  
  医師・患者関係で生まれる医原症の原因
 ・患者を学問的興味でしか扱わない。
 ・不適当な治療処置を行う。
 ・患者の心理を意図的に無視する。
 ・病名をわかっていても告知しない。
 ・患者に脅威を与えておびえさせるような発言をする。
 ・学問的用語による不必要な発言をする。
 ・根拠のないいいかげんな発言をする。
 ・根拠はあるが、不適切な発言をする。
 ・責任を回避するような発言をする。

  医学上の要因「病気のせい」にして医師の義務を怠ること
 ・医学的に治療方針が立たない。この点についてインフォームドコンセントを怠る。
 ・医学的に診断が困難。この点についてインフォームドコンセントを怠る。
 ・誤診。この点についてインフォームドコンセントを怠る。

  医師の非社会性によって生まれる要因
 ・社会的・心理的問題を無視して治療を行う。
 
  診断の不統一から生まれる要因
 ・無責任に他の医療機関・治療者を紹介する。
 ・診断がいいかげんである結果、患者が医師を転々とせざるをえなくなる。
 ・二人以上の医師が異なる診断を行う。
 ・一人の医師が首尾一貫性と説明のない診断をし続ける。


4、医原症を起こさないために医師はどうすべきか

  ・医師が患者に対して、総合医学的アプローチをすること。
  ・良好な医師・患者関係を構築すること
  ・治療者が不用意な言動をしないこと
  ・患者が必要とする、病気への理解、治療への理解を提供すること。
  ・治療者は、スーパービジョンや症例検討会を行い、自らの治療を客観視する。

5、医原症を起こさせない・悪化させないために患者・家族はどうすべきか?(被害者・その家族の経験、裁判を起こした経験をふまえて)

・「医者も人間だから間違いを犯す」という原則を前提に治療をうける。場合によっては、その点については、主治医とよく話し合う。
・インフォームドコンセントを要請する。
・「おかしいな?」と思ったら、「自分のせい」ではなく、「治療の問題」=医原症である可能性を考える。
・患者や家族は、すぐに「自分のせい」と思いがちなので、信頼できる知人・友人、あるいは専門家に状況を説明して相談する。
・「おかしい」事を言われ始めたら、必ず、治療について毎日記録を取る。できれば、ICレコーダーで隠し録音をすること。
・記録は、家族や友人に見せて客観的なものにしておく方がよい。(幸子のN医師宛レポートを参照)
・精神医療について批判的な情報を提供しているホームページで情報を集める。
・医師、カウンセラー、精神科医の倫理規定を参照して、「おかしな医師」に疑問をぶつける。
・ICレコーダーで、医師・カウンセラーの「おかしな発言」を録音し、別の医師・カウンセラーに聞かせて相談する。
・セカンドオピニオンの制度を利用し、別の医師からの意見を参考にする。
・「おかしい」と思ったら、まず、主治医、次に周囲のスタッフ、あるいは病院全体に対して訴えかける。
・大きな病院であれば、患者の苦情相談窓口があるので、問題を解決したいなら、まずそこで相談する。
・治療者や病院が責任逃れをする場合、深追いはせず、その治療者・治療機関での治療は中止する。
・司法・行政は、責任を取らないか、医師の味方をするので、あてにしないこと。
・したがって、おかしな医師からは、たとえ被害を受けても、「仕返し」はできないため、できる限り距離を取り、関わらない。
・ただし、行政機関の医療相談窓口や警察の相談窓口で被害を訴えれば、データとして記録される。


参考文献:柏瀬宏隆「医原症」『新版精神医学事典』弘文堂、1992年、30頁。

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