桜井明彦医師の「告白」
【2000年7月1日(土)17時30分から19時20分頃まで:M氏と桜井昭彦医師との会話:録音テープ起こしより抜粋】
S=桜井昭彦医師
M=幸子の夫
[前略]
(M)考えていただきたいです。一人の死の重さというものを。・・・ご自分をそこまで大切にして、考えてくれた人、・・・その人が何かのきっかけで亡くなっているわけで、で、それがいったいどういう手順でね、手順というか、この5年間というかな、亡くなったか、ということは、よくよく考えていただきたい。・・・誰が悪いとかね、そんなことは言いたくはないけれども、僕は、桜井先生の話を聞いていると、「私はひどい目にあいました、妻がひどい目にあいました」という話を延々としてるけどね、ひどい目にあったのはみんな同じなんだ、と言いたいですよ。みんな、延々と夜中中電話してね、朝まで電話してるんだって、それはもう、今死にますよって、幸子から言われたことは、多かれ少なかれ、やられているわけでね、でもみんな一所懸命何とかしようとしてた人はいた・・・。そのとっかかりのところの鍵が、・・・あなたでしょ。僕はお互いに十字架を背負ってほしいと思っているんです。
(桜井昭彦医師)あのう、これは僕はね、誰に謝ったらいいのかよくわからないけど、土下座して懺悔してますよ。・・・慶応大学病院の治療が終わったときから、この治療の失敗、ということはすごい問題になってるんですよ。あたりまえですけどね。極端にいえば、濃密な関係を作る精神療法を、その後一つもやっていないんですよね。これは事実なんですけど。ずっとこのことを考えてきました。で、多分、これからも考えると思います。それはお約束します。申し訳ないと思っています。彼女に申し訳ないのか、誰に申し訳ないのか、よくわかりません。
(M)だったら、自分が被害を受けた、なんて言わないでください。
(桜井昭彦医師)被害は受けました。それは一つの事実です。・・・
(M)僕がカチンとくるのは、ご自分の被害ということばかりおっしゃるでしょ、・・・これはたしか3月の半ば頃だったと思うんですが、あなたは、自分だけが被害を受けた言ったでしょ。・・・そしたら幸子が、「あなたが私に何かしたということをわかっているんですか」って、彼女が問いただしたことがあると思うんです。そしたらあなた「それはわかってますよ」って言ったでしょ。でもいまだに、最初に自分の被害じゃないですか。
(桜井昭彦医師)本当はそれはうまいやり方じゃないでしょうけどね。
(M)ものの言い方というのかね。
(桜井昭彦医師)まあ、正直言って相当防衛的になっていたと思います。それはお詫びしたいと思います。
(M)それが人間の誠意というものですよ。
(桜井昭彦医師)ただ、私今Mさんにいっていることは、医者のレベルでいっていることではない、ということはおわかりいただきたいと思います。医者のレベルで言うと、そんなに言うことはありません。本当のこというと。人間のレベルだからいっぱい語ることはあります。医者のレベルとしては、まあ、一つの治療がうまくいかなかった、ていうことになります。
(M)まあ、そうでしょうね。
(桜井昭彦医師)そうなんです。こちらが医者のレベルではない入り方をしたから、医者のレベルではない苦情は当然来るに決まってますし、その責任もあると思います。そういうことだと思います。でも、まあ、本当に彼女のことは私は5年間考え続けましたし、これからも考えると思います。
[中略]
(M)あの、わかるだろうな、と思って、一言いえばわかるだろうな、と思ってここまで話してきましたけど、全然わかってませんね。つまり、彼女の苦しみの発火点はあなたですよ、ということです。他にいろいろありましたよ、たしかに。でもね、彼女がいろいろ言っていることを、やっていることをみていけば、そばでみていれば誰だってわかりますよ。「それは不可抗力でした、何ともしようがなかったです」ではなくって、なんかやりようがあったと僕は思っている。そばでみていて思っている。それを考えていただきたいんです。あなたの言葉の使い方とか、人の対し方とか、何かことが起こったときの、まず最初に自己弁護が来るとかね、そういうこと一切合切含めて、よく考えてもらいたいんですよ。お医者さんだからそういうことするのかもしれませんけどね。それは、まあ、おそらく、彼女が一番失望したところであろうと思います。元々そういう人なんだから相手にすることはない、と、思っていたけれども、しかし、執着しているわけですからね、そこのところをくみ取ってもらっても良かったかな、と。ところがくみ取れない人だったんだな、と。まあ、1月に初めてお話ししてから、まあ、僕はだいぶ失望しましたね。「ああ、こんな人もいるんだな」「なんでわからないのか、この人は」って。だからほんとに彼女はかわいそうだと思う。それが生涯かけた恋愛だったなんて、それはかわいそうだと思う。相手が悪すぎたと思う。・・・まあ、彼女の遺志なのかどうなのかはわからないけれども、良い医者になるにはどうしたらいいかよくかんがえてください。僕もよく自分でよく考えてますから。
(桜井昭彦医師)今のは、Mさんの口からでた言葉とすれば、私は反論しますけど、彼女の遺言としてでしたら、100%私は受け止めます。客観的にということであれば、いろいろ申し上げたいことはあります。でも今のが、たとえば、彼女の心情であるとすれば、私は100%受け止めなければいけません。
(M)まあ、だから、ご自分が、関係性の中でいろいろとやり合ったことは、自分が被害者であったばかりではなくて、自分が加害者だった可能性も十分にあるということをね
(桜井昭彦医師)可能性だなんて申し上げていません。私は、それは認めます。それは認めてます。そこら辺はもう、当然そういう見方から入ってきていただいている、ということを前提にお話しさせていただいてます。
(M)まあ、それを今言わずに1月に言ってもらえればよかったと思いますね。なぜあのとき言わなかったんですか。今言えることがなんであのときに言えなかったんですか。まあ、つくづくおもいますけどね。・・・これから言い出すと繰り返しになるからもうやめましょう。まあ、・・・腹が立ったら電話するかもしれませんから。・・・もうしばらくちょっと、僕も自分と向き合って生活していきたいと思いますので。
(桜井昭彦医師)あのう、今のお話で行けばね、私があなたに責任がない、なんていうことは、多分あなたにとっては無効でしょうけれども、これは別に立場を云々とか、お為ごかしが云々とか、あなたの気持ちを救おう云々とか、ということでなくて、私はMさんに罪がある、ていうふうな見方というのは、あり得ないと思います。あんまりあり得ないと言っちゃうとかえって申し訳ないのかもしれませんけれども、それはないと思っているんで、それは私がそういってる、本当にそう思っている、ということだけちょっと聞いてください。それから先ほどのMさんのご意見と、ご本人の遺言と、それは、受け止めます。ご本人だったらその形で、まあ、言葉は違っても、そうおっしゃったかもしれないですね。ありがとうございました。
(M)僕もわかんないことがいっぱいあるから、・・・いろいろと、ああでもない、こうでもない、と聞いてきたんです。好きだったんでしょ、本当は?
(桜井昭彦医師)そうです、でも、一緒になろうとか、思わなかったんです。
(M)だからいろいろ言ったんですよね?
(桜井昭彦医師)うん。
(M)それはひどいことです。
(桜井昭彦医師)まあ、ここでいろいろいっちゃうといろいろと誤解を生じるといことになりますけど、その言い方で言えば、それでいいです。あのう、好きだったでしょ、本当は、という言い方にすると、それは恋愛関係として私が捉えていた、ということになりますけど、それはそうではないです。ただそれは、それ以上、多分それ以上の関係があったんですよ。
(M)それはとても僕が入り込める関係じゃないからこそ、僕は聞いているんですよ。
(桜井昭彦医師)どうでしょ。それはわからない。でも、今日お話を伺っていて、彼女はずいぶんあなたに本音は出してましたね。あの、想像以上に関係はあったんだと思う、できてたんだと思うんですけれども、でも私にも恨み言がでてきた、彼女の生きづらさ、というのは並のもんじゃなかった、てそれはあるんですよ。だから、それは、それが、それから僕は引いちゃったのかもしれないしね。まあ、いいや、いいわけになっちゃう。でも、おっしゃっていただいて良かったです。私も言えて良かったこともいっぱいありますし。
(M)まあ僕も聞けて・・・良かったのか悪かったのかわかりませんけど。
(桜井昭彦医師)最後に、でもやっぱり後悔してますし、申し訳ないと思っています。幸子さんに対してね。
(M)ずっとそう思っていてください。
(桜井昭彦医師)それは、何度も言わないといけないんです。
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