泰國漫遊記・2000年・夏の部(後半)
カジン・アーチャン


8/29(火)曇り
       チェンライ「ワン・イン・ホテル」2泊後、今朝11時にチェックアウト。
      バスで旅の最終目的地チェンマイへ。バス待ちの間、ナイト・バザールに隣接
      するターミナルで観察していると、ずんぐりむっくりのトルコ系中年男がスレ
      ンダーで黒髪ゆたか、しかし肌は地黒の南方系タイ女を伴って現れた。派手な
      お揃いの紺色Tシャツを着ている。ハイヒール・サンダルを小粋に履きこなした
      専属ガイド(夜のお相手も兼ねているはず)とチビデフ白人という不釣り合いカ
      ップルだ。悔しくもないが面白くもない。ちッ!
       12時半、出発。バスの中で駅の物売りから買った袋入りの甘酸っぱい果 実
      細片を囓っていると、何だか歯の感じがおかしい。すーすー空気が抜ける。舌で
      探ってみると穴が空いているみたい。さらに探ると、出国前に応急治療した虫歯
      の箇所が欠落していた。両市の行程は3時間、山を登りそこからチェンマイの
      盆地へ下ってゆくが、ちょうど中間地点にある峠の茶屋あたりで欠け落ちたようだ。
      一寸感慨あり。冷房が効きすぎた車内で遙けき思いに耽る。
       午後4時、チェンマイ北バスターミナルに到着。山国の盆地だが、チェンライと
      違い日中は暑い。やっぱり熱帯の国、天気雨がさっと降ってすぐに晴れ上がる。
       乗り合いタクシー・ソンテウ(荷台を幌で被った6,7人乗りの車)に乗り、
      ガイドブックに名だたる「ディスコ・バブル」を併設したポンピン・ホテルへ急ぐ。
      バブル期には夜ごと大乱痴気騒ぎが繰り広げられた伝説のディスコらしい。とう
      てい女をナンパできる身ではないが、今回はぜひ泊まりたいと思っていた。
       1泊990Bと告げるフロント係に、5泊なら、と訊ねるとたちまち790Bに
      値下げされた。融通の利かない日本と比較して、タイ値段のアバウトさはその場
      しのぎの阿吽の呼吸が実にベリィグー!。
      部屋に荷物を置き、ヘアサロンへ。3月にも使った店だが今回は男の理容師に全部
      仕切られ、シャンプーも彼。で、料金は150B。前回100Bぐらいで、どうも
      ボラれた感じ。でも、ま、いいか、マイペンライ、マイペンライ。タイ語を喋れぬ
      ハンディが割り増し料金に化ける、と思って納得しとこう。  
       マイルドセブン45B、街角で買った蒸し鳥の半身(ガイヤーン)52B、さらに
      ホテルの隣の酒屋でシンハビアを購入して部屋に戻り、ちょっと一服。 
       今夜は年から年中、日タイ親善に骨身を削っているわが同僚・カズが2ヶ月前に
      チェンマイに開店した「レジェンダー・ダイニングバー」へ見参の予定。
       宵闇が下りると、ホテル横手のステージでタイダンス・ショーが始まる。ここは
      チェンライのステージと違って完全に観光客相手。ファラン(白人)、韓国人グル
      ープ、台湾人グループ、日本人エトセトラがそれぞれのお国柄丸出しでオープン・
      エアのテーブル席を占領し、飲み食いに忙しそう。タイ舞踊はエキゾチックだが、
      チェンライのそれを見てきた目にはつまらなく映る。その広場を通 過し、昼間も
      営業している屋内の衣料品店、アクセサリー店、エトセトラを抜けると、チャンク
      ラン通りのナイト・バザールにぶつかる。
       ここがチェンマイの観光の中心、世界中の観光客に超有名なバザールである。
      道路の両側にずらりと露店が出現し、衣類を中心に細工品、民芸品、宝飾、土産物、
      etcの店が所狭しと並び、狭い路地をぶらつくと物乞いの乞食や民芸品を天秤棒に
      ぶら下げた少数民族の物売りが観光客にとりついて放さない。露店の売り手たちも
      客を逃さぬよう、激しい売り込みを繰り広げている。他の国の観光客と比べて日本
      人は絶好のカモらしく、「おー、日本ジーン、シャチョーさん、シャチョーさん、
      オジョーさん、オジョーさん、安いよー」と男も女も見境なく法外の値段をふっか
      けられる。東南アジアでは韓国人がしぶちんで有名、そこで「ノー、ノットジャパ
      ニーズ。アイムコーリャン」と応戦すると、チガウ、チガウ、と言いながら、何だ、
      コーリャンかという顔になって退散するのが可笑しい。
       奥方と二人でそんな狭い通路を通り抜け、カズの店「レジェンダー・ダイニング
      バー」へ急いだ。そこは最近開かれた広場の一角、中央のリング上でタイ舞踊、
      ムエタイ、おかまショーなどが公開される。チェンマイ第一の高級ホテル・メーピン
      の裏手に位置するが(このホテル、アジアの歌姫テレサ・テンが客死したホテルとし
      て有名)、深夜遅くまで続くおかまショーの大音響にキレたメーピンホテル・オー
      ナーが広場ごと買収に動いていると、カズが言った。まだ新開地のせいか、入り口
      あたりの照明が暗い。広場はぐるりとオープン形式の店が囲っているが、シャッター
      を下した店も何軒か目についた。右端隅っこに総ガラス張りの店があり、それが
      お目当ての店だ。冷房が効いた室内には金を掛けたライブハウス風のお洒落なトイレ
      が作ってあったが、いかんせん、広場内の店の位置が悪すぎる。夜のチェンマイは
      オープンエアの方が涼しげで、かてて加えてガラス張りの店は外見にも値段が高そう
      で逆効果。ともあれ、カズ入国前に店の様子を探らん、と二人していろいろな料理を
      注文してみた。カウパット(焼き飯)、スパゲッティ、さらにご祝儀と張り込んで
      店で最高価のビーフステーキを注文す。飲み物はメーコンのソーダ割り。あんまり
      豪勢にたのむので、店の女の子二人が目を白黒して、ナニ、コノ人達ハ、という顔で
      厨房へ走る。 
       どうもガラス張りの室内は息苦しい。1席だけある外のテーブルでリング上のショ
      ーを鑑賞しつつ飲食す。カウパットOK、スパゲッティまあまあ。で、待望のステー
      キや如何、と待ち受けると大皿に乗って出てきたそれはナイフで切ろうとしてもどう
      にも全然刃が立たぬ恐ろしい代物だった。やっと切り取った一片を頬張ったが、筋ば
      かり固くてどうしても噛み切れない。まあ、しかし、親友カズの店。文句を言っては
      可哀相だし、ステーキの大半を残したまま初日の食事を終えた。帰り際、釈然としな
      い顔の女の子二人に、コップンカーと挨拶される。翌翌日タイに来たカズに話すと、
      「ステーキなんかたのむ客はいないよ。慌ててどこかへ肉を探しに行ったんじゃない
      か、タイ人だしな」と大笑いしてた。おとなしくホテルに帰って休む。

8/30(水)くもり

       一日チェンマイ市内で過ごす。午前中TVで放映されている連続ドラマ「雪花神剣」
      という中国・時代劇がおもしろい。梅終雪という女主人公は少林寺拳法の使い手。
      当然ながら絶世の美女だ。だが少林寺の流派間に跡目争いが起こり、否応なく骨肉
      相食む闘いへと引き込まれていく。主人公の姉と妹も名手だが、それは邪悪な拳法。
      一方相対する流派の若き宗主はこれまた非常な美男。しかし技こそ上手だが、性格は
      優柔不断で情けない。彼に恋心を抱く梅終雪はさらに踏み込むことかなわず、両家は
      敵と味方に引き裂かれて闘争を繰り返す。二人の運命や如何、という画に描いたよう
      なメロドラマ(タイ語がわからぬので字幕の漢語を読んで類推した)が延々と続いて
      いくのだ。主人公の美しさに惚れたのはタイの視聴者と同じで、毎朝ホテルのTVに
      かぶりつきドラマの続きに見入るのが日課となった。
       午後の日盛りに出歩くタイ人は少ないが、勤勉なジャパニーズは街中をうろちょろ
      歩き回る。お堀の内側、旧市街に蔓延っているファラン好みのインターネットカフェ
      に入り、エアメールを4通書く。奥方はインターネットで自分のHPを引き出してご
      満悦。ホットメールのやりとりに忙しそう。本屋に出向く奥方とは別 行動して、日盛
      りをぶらぶら歩きカズの店の近くまで来た。この辺はタイ・マッサージの店が多い。
      どこに入るか思案した結果、小綺麗なファラン好みの店に入ると、女の子は若いが
      美人に非ず、田舎のネエちゃん。薄い壁で仕切られた個室入口にカーテンを下ろし
      マッサージ開始。1時間半で250B。この子のマッサージは非常に丁寧だった。
      ブッディストらしく開始前に両手を合わせて合掌し、最中は自身の胸や腰が当たら
      ぬように座布団でカバーして直接接触を避けながら手のひら、指を巧みに使ってマッ
      サージをすすめていく。チェンライのマッサージ嬢はあやしい雰囲気があったが、
      こちらは本格派。てきぱきお仕事を済ませていくので気持ちが良い。隣室のアメリカ
      人男性客がしきりに笑い声を立てていたが、やりとりの内容は不明。日本のスポーツ
      紙などは、タイ・マッサージの妖しい世界を面白おかしく描写 するが(王様のタマ
      揉み、とか、その他究極のスペシャルプレーがあるらしい?)、大方の店は真っ当
      な伝統的マッサージに終始しているようだ。日が傾く頃、身も軽くホテルに戻る。
      奥方、いったい何をしてきた、という顔でじろり我が輩を一瞥した。
       夜、ふたたびカズの店へ行くと女の子ふたりが満面に笑みを浮かべて我々を迎えた。
       昨日カズから電話があり、正体がバレたらしい。女の子はビルマ国境に近いメー
      ホーソンの生まれ。去年カズがタイへ行ったときメーホーソンを訪ねて知り合いに
      なった。タイにはまったカズは半年でタイ語をマスターし、すでに相当奧深くタイ人
      世界に潜入している。別に女目当てではなく、タイ人の気質がぴったり来たというの
      が惚れた理由。知り合った経緯を書いていると切りがないが、その家の祖父に気に
      入られて、娘を嫁にやる、と定番の一言を言われたようだ。タイ中によく知らない
      許嫁が10人以上いるようだ、と言ってカズは笑う。姉妹の姉の方の名前はレン、
      妹がノン、店の従業員の男の子はコーといい、同じメーホーソンの出身で姉妹の従兄
      弟だそうな。
       客は今夜も我々のみ。オフシーズンなので街全体が観光客日照りだが、とりわけ
      この店には客が来ない。他の店にはファランの姿がちらほらみえるのだが…ショー
      を始めて3ヶ月、まだこの広場に集客力はないし、乾期のシーズンにどれだけ流行る
      かで存続を決める、とカズは宣う。
       リングのショーが始まった。最初はタイ舞踊だが、これがなかなかグッド。
       14, 5才の女の子達がきらびやかな民族衣装に着替えて踊る。楽屋が隣なので
      すっぴんの素顔までわかる。ダンス学校の生徒が練習を兼ねて踊っているらしい。
      終了後ぐるりと広場を一周しおひねり(?)を集めていく姿が可愛らしい。 
       次はムエタイ。地方毎に格付けがあるらしく、3ラウンドの闘いは本気の拳闘ショ
      ーだ。試合前、独特の蛇がうねるような踊りが戦士によって奉納されるが、ライト
      アップした広場の向こうに見える古い仏塔の姿と相俟ってなかなか絵になる風景だ。
      外のテーブルで舞台を眺めながら飲んでいると派手な衣装のおかまのダンサーがやっ
      て来て楽屋に入った。おかま姉さんたち、まるで我が物顔でカズの店のトイレを使う。
      これじゃ、店はおかまのトイレとしてしか役立ってないぞ、でもタイ人のマイペン
      ライ気質を思えば仕方あんめい…すると、レンが「カズから電話よ」と言ってケー
      タイを持ってきた。今晩到着する予定が過密な労働日程のせいで倒れ、半日入院して
      点滴を打ち今日のチケットはキャンセル。キャンセル待ちでチケットを取って明日
      来るとのこと。会えば会ったで又忙しくなりそう。 
       奥方は明日からレン、ノン姉妹をレンタルしてタイ語を勉強したい意向だ。

8/31(木)曇り

        午後2時、旧市街の店でエアメールを書いた後、ぶらぶら日盛りの路地を歩い
       ているとバナナ園にぶつかる。包丁かかえた少女が迷彩服の少年と園内にいるのに
       遭遇し、軽いめまいを感じた。彼らには日常だが当方には非日常。我が深層心理の
       どこかに触れてくる。そうこうしていると大きな寺院の前に出た。
        チュディ・ルアン寺院。巨大なストゥーパの四壁に金色の大仏が鎮座している。
       その大仏を守護する白象が一段下の壁に彫られている。鳩どもは象の周辺の蔭の
       部分に憩っている。掃除する少年僧、暑さでふらふらの観光客、まあそんなよく
       ある図柄だが、この国ではまだ宗教が立派に機能して役割を担っていることがトリ
       ップ感を伴いつつ実感された。

       象の牙に二羽の鳩のる昼下がり少年達のマラニャム・アナテート
       壁面に据えつけられて崩るまで象たらんゆえに鳩遊ばせり


        外に出て小学校の塀沿いに歩いていると学校の中から元気な声が満ちあふれて
       きた。タイはまだ若い国のように思えた。子供達が元気なら壮んな活力が湧き出て
       くる。それと制服姿の黒い髪、黒い瞳の女の子は掛け値なく可愛い。暑さに喘いで
       いるとトゥクトゥクがすり寄ってきた。おもろいところなら行くぜ、と拙い英語で
       交渉。オーケー、オーケー、と運ちゃん。通じた、と思って任せると、見慣れた
       道路を横切りあっという間にポンピンホテルの前まで来やがった。これで50B
       とは巫山戯るにも程がある。何だ、ウソつくなよ、と怒ると、再びオーケー、オー
       ケーと答えて今度は市内を流れるメーピン川沿いに車をとばす。この道筋は涼し
       そうでなかなか風情がある。そのうち車はだだっ広い原っぱみたいなところへ着い
       た。向こうにタイマッサージの大きな建物が見える。ココハドコダ、と尋ねると、
       ココガソウダ、と答える。ナニガ、と問えば、オンナと返答。すぐそばのせこい
       建物が有名な「パンドラ」というマッサージ・パーラー。建物の前の屋台でおば
       ちゃんがウインナーなど炙ってる。オンナハマズイ、ワイフガマッテル、と困惑
       すると運ちゃん、マイペンライ、と言って笑う。マイペンライじゃないぞ、コロ
       サレル!と、喉を掻き切る真似をすると、ははん、と笑ってトゥクトゥクは帰路
       についた。日本でも同じだが、タクシーの運ちゃんは風俗関係以外手駒がない。
       そそくさとホテルに戻り休憩す。
        夜の7時すぎケータイ鳴れり。到着したカズから。すぐに出向くと隣の店の
       シャッターが下りている。チーママの新愛人とオーナーである旧愛人が鉢合わせ
       しそうなので急遽閉店した、とタイのご近所事情なら何でも詳しいカズの解説あ
       り。両者とも日本人で、チーママに完全に手玉に取られているのが可笑しい。
       飛行機を乗り継ぎ、遠路遙々やって来たカズはさすがにお疲れ気味。 
        11時前に別れて、奥方とふたりでポンピンホテル1Fに開店しているライヴ
       ・スポットに入り小1時間ばかり飲む。ここはタイ人の若いカップルや仲間達が
       目一杯遊ぶための店。中央の生バンドは下手なのに地元の若者たちに大受けしてる。
       外人客は「ディスコ・バブル」へ回るので少ない。適当に上がり。

9/1(金)晴

        ホテルの朝食はバイキングだが、ポンピンホテルでは中華の品数が目立つ。
       飲んだ翌朝だから、もっぱら中華粥プラスα。奥方は果物ほかいろいろな品を
       かき集め食べきれなくなって残す。辺りを観察してると、日本のヤッちゃん二人
       がタイの女を連れて食ってた。まあ、なんというかがさつな食い方で呆れた。
        奥方、声をひそめ「あのおっさん、パンチパーマで見るからに大阪のヤッちゃ
       んだけど、飛行機下りるときスチュワーデスがぜんぜん挨拶しなかった、と言っ
       て怒ってたよ」と言って笑った。当方も彼らの方をチラッと眺め、スチュワーデス
       の気持ちを察した。同じ女連れでも中国系の仕事人はちがう。いなせなダンディが
       あれこれ手下どもに指図しつつ女とブレックファーストを食べている姿は絵になる。
        タイのホテルはそのほとんどが女連れ込み可。それゆえどこの国の男もタイの女
       を連れている。一方でファランの老夫婦は、婦人の方が男とタイ女のセットを
       見て、下劣なモノを見たとばかり蔑視の視線をとばす。(そういうファラン女は
       例外なく、醜くぶくぶくに太っている)
        当方もファランの蔑視対象であるアジア人中年だが、男の浮気な本性を剥奪され
       たまま人畜無害な存在としてバイキングの席に座っているのだった。

        カズ曰く「今日明日の2日間、Kちゃんに二つほどスペシャル企画を用意しまし
       た」という企画の第1段はツーリング。チェンマイ駅近くのレンタル・バイク屋で
       モトサイ(50ccバイク)を借り(1台100B)、それに乗って郊外の温泉へ
       行こう、というプランだ。最近乗ってないのでビビったが、駅前広場で練習して
       そのままゴー。北の方角へ向かったが、途中、市場で昼食を摂る。闘争用のカブト
       ムシが1匹50Bで売られていたのは驚き。郊外はアップダウンのある直線舗装
       路が延々と続いている。村はずれでプシューと音を立ててバイクが止まった。ショ
       ックだったが単なるガス欠。幸い近くにガソリンスタンドがあり、事なきを得た。
       周囲の山々を見渡しながらノーヘルのまま時速70kmでぶっ飛ばすのは爽快。
       サーカムペーの温泉へと急ぐ。入園料10Bを払って中に入ると園内の一角で熱い
       硫黄泉が噴きだしていた。建物内の入浴料は120B。これはジャグジー式の普通
       のバスでどうってこともない。6時すぎに帰路につく。夕暮れの空が曇ってスコ
       ールが来そう。雨期だから当然だが、あんまり濡れる雨でなかったのは幸い。
       駅前のレンタルショップはすでに閉店していた。パスポートを預けたままだから
       不安だったが、カズはぜんぜん気にしてない。ホテルに戻ると奥方不在。あんまり
       遅かったので角を出したかと怯え、妹のノンに迎えに行かす。 
        奥方、我々の帰りが遅いのを心配してたが、激怒してはいなかった。
       11時まで店で飲む。その後深夜「ディスコ・バブル」のそばに出ている屋台で
       シンハを飲んだ。金曜の夜なので周囲は客で溢れている。

9/2(土)曇り

       12時すぎ、カズがレン、ノン姉妹とコーを連れて現れた。企画の第2段は競馬。
       タイでは土曜日に競馬がある。(ただし、バンコクとチェンマイだけ)男は競馬
       へ、女は市内見物へ、という段取りだ。
        トゥクトゥクで20分の競馬場は西の郊外に位置するらしい。入場料10B、
       予想紙15B。でもこれ、単なる出馬表でぜんぜん参考外。クラブやマッサージ
       ・パーラーの宣伝にページが割かれ、スポーツ新聞なみにでかでかと女の子の写
       真が載っている。案内役のコーも競馬初体験。書かれた数字の意味がぜんぜん
       わからない。
        レースは全部で10Rあるが、推参したのは3Rから。ギャンブルの鉄則通 り
       わからぬときは見が正解。どのレースもコースは同じで1000m左回りのダー
       トを走る。レース毎に馬の格は違うようだが、全く同じ向こう正面 のゲートを
       出て同じコースを10数頭の馬が走ってくる。正面スタンド下でみていると、
       集まった地元のおっさん達、兄ちゃん達が声を張り上げて叫んでいる光景は日本
       の草競馬と同じ。当然タイ語で叫ぶのだが、それが同じ絶叫に聞こえてくるのだ。
        馬券の種類は単複のみ。2レース続けて勝ち馬を当てるダブルという馬券もある
       が投票数ゼロ。オッズを見ると電光掲示板に2桁の数字がピコピコ変動中。
       これは馬券の下限額10Bに対する配当と判明(コーはわからないので我が輩が
       解読した)。馬がゲートを出た後もオッズは変動し、30の数字が一気に18まで
       下落すると先ずそれで決まり。全く、完全な出来レースやんけ。ファンは熟知して
       おり、その結果5倍以上の配当が出れば大穴になるのだ。
        競馬場につきものの飲食場所は屋根のある馬券売場の窓口に並行してずらっと
       並んでいる。テーブル席も多数あるが、串焼き屋の前で立ち飲みしている地元
       ファンもたくさんいる。我々3人は1席確保して、メーコン1瓶と氷、ソーダを
       たのみ、酒のつまみをおばちゃんに注文。青パパイヤの千切りに青唐辛子、蟹、
       玉葱などを加えて擂り鉢で擂りつぶしたイサーン名物のソムタムや、脂ぎとぎと
       の腸詰め焼き、エビのかき揚げ(胃にもたれそうな色だが美味)、同じくタガメ
       のかき揚げ!(これはさすがに食わなかった)等。
        コーに500B与え、カズと我が輩は好き勝手に馬券を買った。雨が降った
       直後の4R、15倍の大穴が出てカズ的中す。パシリのコーに換金に行かせると
       悄然として戻ってきた。的中したが、馬券の種類がちがうと拒否されたという。
        何でも買いに行ったときコーは周りの連中にダブルがいいと勧められ、それを
       買ってしまった、と嘆く。でも、もう1回狙った馬番が当たれば配当は80倍に
       跳ね上がる。でも、単独的中のままだと紙屑でしかない。で、問題の5Rだが、
       別口の単勝も買ったカズはまたまた8倍を的中。だが残念ながらダブルは外れて、
       折角の的中券が紙屑に変じてしまった。これではツキも失せてしまう。
        一方不調の我が輩、残り2レースとなった9Rで500B1点勝負。
       オッズは下がって1.7倍だが、どかんと的中。ホッとして払い戻し窓口へ行く
       と返ってきた金は1桁足りない85B!騙しやがった、と身振り手振りで不正を
       訴えても言葉は通じず埒があかぬ。憤然として席に戻り、またタイ人に騙された
       (前回の旅のとき郵便局員に騙されたことあり)と、息巻きながらポケットに手
       を突っ込むと投入したはずの500B紙幣が出てきた!払い戻しのネエちゃん、
       疑ってゴメンなさい!タイ人を見たら泥棒と思え、と考えた我が輩は真に大馬鹿
       者。ごめん、ごめん、ごめん。
        気を鎮めるべく便所で小用を足しているとケータイが鳴る。ホテルに戻った奥方
       から。だが、最終レースが残っている以上撃ちてし止まじ。日本人競馬フリーク
       の魂を賭けて売場窓口へ急行す。1番の馬に500B、と筆談したが係員は無情
       にも、いま締め切った、と受け付けぬ。振り向けばすでに馬は地響きを上げて走
       ってる。直線に入って1番馬は内をついた。ゴールへ横一線のまま飛び込んだ
       4,5頭の馬のケツを我が輩は呆然として眺めた。写真判定の結果 、1着、1番、
       単勝60B!買ってたら3000Bだ。画に描いたような逆転大勝利だったのにィ
       …(因みにチェンマイの一夜妻の相場は1500Bだとさ)

9/3(日)曇り

        タイの最終日。チェンマイで出国手続きを済ませ、タイ航空でバンコクへ飛ぶ。
       夜11時すぎの日航便に乗り継ぎ、帰国の途に着くことになっている。
        午後、ホテルのロビーにいるとカズが昨日の3人ともう一人女の子を連れて現れ
       た。姉妹の知り合いらしいが、カズ曰く「タイ人は増殖する」
        カズは2日遅れで帰国の予定。ホテルでバイバイして、我々二人はチェンマイ
       空港へトゥクトゥクを拾った。この運ちゃん、やたら日本人を乗せるらしく、
       馴れ馴れしい。下りるとき手書きの名詞までくれたが、生意気にもメールアドレ
       スが記してある。TukTuk@となっているのがご愛敬。イミグレーションで
       待機していると乗客の30%が日本人。まるで吸い寄せられるようにタイに来て
       いるのだった。

       翌朝6時50分、快晴の成田空港へ無事着陸。さすがに疲れた〜。

【おわり】

 


 ■ RAKUDA